18 ページ20
「Aちゃん…その、ご、ご家族は?」
「いませんが?」
手当の準備をしているAちゃんが手を止めキョトンとした目をして首を傾げる。
「いやいやいや!ちょ、ま、」
「頬、染みるかもしれませんが、失礼しますね」
「だだ駄目だって!」
慌てて立ち上がったせいで、行き場を無くした綿球からは、消毒液が、ぽたりと、畳の上にシミを作る。
訳が分からないといったように眉をひそめるAちゃんに心は痛むが、事態は深刻だ。
「年頃の女の子がよく知りもしない男を家にあげたら駄目でしょうが!」
あ、俺今めちゃくちゃ炭治郎っぽい。
場違いなことを考える俺に、Aちゃんはハッと目を見開く。
可愛らしい顔が途端に真っ赤に染め上がる。優しく凪いでいた心臓が壊れそうなほどバクバクと脈打っているのが、ダイレクトに鼓膜に響いて、思わずこちらまで赤面してしまった。
「もしかしなくても、Aちゃん照れてる?」
「あ、あの不謹慎なのは重々承知ですが、その、我妻さんがあまりにも綺麗なお顔立ちなので…急に緊張してしまって…」
「その反応はズルすぎでしょ」
逆にこっちが恥ずかしくなる程の心音に、俺も少し冷静さを取り戻して、目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「Aちゃん可愛いから心配で…冷たっ」
「はしたないことして、すみませんでした…」
消毒液を含ませた綿球を俺の頬に滑らせながら、もごもごと謝罪の弁を口にするAちゃんに心が痛む。
「気持ちはすごく嬉しかったよ!俺、女の子にこんなに優しくしてもらったの初めてだったし!Aちゃんすごく可愛いし!」
「ッ…」
熟れた林檎のように頬を染めるAちゃんを見た瞬間、雷に撃たれた時のような衝撃が走った。
嗚呼、運命ってこんなに突然やってくるんだな。
この日、俺は生まれて初めて本気の恋に落ちた。
「やっぱり俺たち結婚しよう!!」
「え…」
一生に一人でいいから誰かを愛して、この手で幸せににしたい。
叶うならそれはAちゃんがいい。
「まだ、何もお互い知らないけど、俺の運命の人はAちゃんだって気づいちゃったんだよね!だから、俺と結婚してください!」
頭を垂れて手を差し出す。まさか一世一代の求婚がこんな形とは味気ないけど、今を逃すわけにはいかない。
「それだと私の運命の人が我妻さんってことになっちゃいますけど…わぁッ」
照れたように視線を外しながら答えるAちゃんを思いっきり腕の中に閉じ込めた。
123人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
churi(プロフ) - ☆りんご☆さん» ☆りんご☆様(^^)コメントありがとうございます!とっても嬉しいです(;O;)またご縁があればよろしくお願いします★ (2020年11月18日 15時) (レス) id: c462110017 (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - とても素敵なお話でした!これからも頑張ってください! (2020年11月18日 10時) (レス) id: b4140779db (このIDを非表示/違反報告)
churi(プロフ) - 葵さん» 葵様(^^)コメントありがとうございます!そう言っていただけで嬉しいです★また妄想がまとまったら形にしていきたいと思っていますので、その時は宜しくお願いします(*^^*) (2020年11月15日 5時) (レス) id: c462110017 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 続編にしても善逸の短編にしてもめちゃくちゃ楽しみです。。。。!!!!早く読みたいです!泣 頑張ってください!! (2020年11月14日 12時) (レス) id: efe86a5252 (このIDを非表示/違反報告)
churi(プロフ) - 尊さん» 尊様(*^_^*)誤字の件、教えてくださりありがとうございました!!全然細かくないです…すみません。嬉しいコメントも重ね重ねお礼申し上げます☆ (2020年11月14日 11時) (レス) id: a5a165b70a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:churi x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 16時