プロローグ ページ2
闇雲に雑踏を駆け回る。
恐怖に身体も心も支配されて、それでも懸命に足を動かすことだけに集中する。
草履はとうに鼻緒が切れて、むき出しの素足はいくつもの傷が点在している。
不思議と痛みは感じない。
否
恐怖に支配され、痛覚すら麻痺してしまっていると言った方が正しいか。
ハァ、ハァと喉の奥から途切れ途切れに湿った荒い息が漏れる。
本能が警告を鳴らす。
私の命はここで潰えると。
漠然と、でもあらがえぬ事実として胸の中にすとんと落ち込んだ。
一筋の涙が頬を濡らす。
想いを伝えたい人がいる
気持ちを分けたい人がいる
できることならば
次こそ幸せで温かな世界で
あなたと
─────────
「ん…」
カーテンの隙間から差し込む太陽の眩しさに思わず目を細める。
同じ夢を繰り返し見ることも、悪夢に魘されることも、とうの昔に慣れてしまった。
頬には涙で濡れた跡が残る。
重いため息を一つ吐き出して、身支度を始める。
夢の中の私だろう人は、あの後、化け物に喉を一突きされて即死する。
なんとも呆気ない結末だ。
「はぁ…」
もう何度めか分からないため息をついて玄関の扉を開けた。
大学の門をくぐり、目的の講堂まで足を運び、後ろの方の席に腰掛ける。
講義の資料と筆記用具を机に広げて、少し遅れて登場した年老いたおじいちゃん教授の取り留めのない話を聞いて、また次の講義を受けに教室を移動する。
我ながらなんて味気ない日常だろうと一周回って感心すら覚える。
友達が居ないわけでも、いじめられていた過去があるわけでもない。
やや苦学生ではあるが、バイト先の先輩や友達はいい人だし、離れて暮らす家族とも仲が良い。
ただ、周りの人たちのように何かに打ち込んだり、はしゃいだり、熱くなったり、そういうことにまるで興味がわかないのだ。
波風一つ無い凪の人生をこれからも死ぬまで続けていくのだと本気で思っていた。
この時までは────
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churi(プロフ) - ☆りんご☆さん» ☆りんご☆様(^^)コメントありがとうございます!とっても嬉しいです(;O;)またご縁があればよろしくお願いします★ (2020年11月18日 15時) (レス) id: c462110017 (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - とても素敵なお話でした!これからも頑張ってください! (2020年11月18日 10時) (レス) id: b4140779db (このIDを非表示/違反報告)
churi(プロフ) - 葵さん» 葵様(^^)コメントありがとうございます!そう言っていただけで嬉しいです★また妄想がまとまったら形にしていきたいと思っていますので、その時は宜しくお願いします(*^^*) (2020年11月15日 5時) (レス) id: c462110017 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 続編にしても善逸の短編にしてもめちゃくちゃ楽しみです。。。。!!!!早く読みたいです!泣 頑張ってください!! (2020年11月14日 12時) (レス) id: efe86a5252 (このIDを非表示/違反報告)
churi(プロフ) - 尊さん» 尊様(*^_^*)誤字の件、教えてくださりありがとうございました!!全然細かくないです…すみません。嬉しいコメントも重ね重ねお礼申し上げます☆ (2020年11月14日 11時) (レス) id: a5a165b70a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:churi x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 16時