十二頁目 ページ14
奥の部屋は掃除がされているものの、少し埃っぽかった。
シャオロンは私を中に入れて、静かに電気を消す。
そうだよね。顔なんか、見れるはずがない。
目の前にいる人はシャオロンのはずなのに、見知らぬ男のように思えてならなかった。
聞こえてくるのは微かな嗚咽。泣いているのだろう。
先程までのロボロさんに向けていた笑みは崩れ去っていた。
「ごめんなあ。俺はAと一緒にいたかった。それだけでなんや。
もっといい方法が、あったはずなのに」
『……一緒にいる方法は、それ以外になかったの？』
「Aが、他の奴と添い遂げるって、そう考えるだけで吐き気がした」
嗚呼、なんて自分勝手な理由なのだろう！
これほどまでに想いを肥大化させる前に止められなかったものなのか。
私には、恋人と家族が一緒にいる、“今”で×にたかった。今が、一番幸せだった。
どうか神が見ているのなら、彼に罵声を浴びせる前に天国へと投げ込んではくれないか。
「Aが可笑しくなってるのは分かってるし、そうさせたのも俺だって知ってる」
「昔だったら、頬をぶん殴って無理やり成仏させてもらったはず」
『可笑しくなんかないよ。大人に、なっただけで』
「なあ、頼む、俺を×して欲しい。これ以上苦しい思いから解き放ってくれ……
Aの望むことはいくらでもするから……」
我儘な人。
私の望んでいた答えではないことが残念だが、
鬱さんに言われた“あの言葉”と重なっていることにどきりとする。
そうか、私の勇気が足りなかっただけなのか？
伝えよう。本当のことを。彼に対してどう向き合うべきか。
『私だって子供だよ。天国に、行って“みんな”を待ってたいから、受け入れてしまった』
『私は、成仏するためにシャオロンの元に来たの、』
『そして、貴方が、私のために！！消えてしまわないように！！』
私は人ではない。
人ではないものが現世にとどまって何の意味がある？
恋人が他の人と幸せになるのを眺めていればいい？
両親が衰えて亡くなっていくのを待てばいい？
ごめん、忘れて。
そう呟いた時、シャオロンは私に触れる。
勿論、透けてしまったけれど、ほんの少しだけ幼い頃に戻れた気がした。
「コネシマの“無理やり祓う”っていうのは、自×と同じなんや」
「お前を、地獄に連れていきたくないから……」
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花氷 ベタ(プロフ) - 夢野さん、感想ありがとうございます！ (2022年7月16日 16時) (
レス) id: 728b26bf44 (このIDを非表示/違反報告)
夢野(プロフ) - うわあ好き(？)これからも更新めちゃくちゃ楽しみにしてます！！！ (2022年7月16日 15時) (レス) id: 078c74bdad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年7月16日 14時
