三月うさぎのアフタヌーンメモリーズ

第10話 ページ10

彼女の帰りを待っていた

百合さんは、夕飯の支度があるからって
先に帰られたので、俺は今は1人っきり

正直、ここに連れてきた事が
正解かは分からない

帰ってきた彼女がまた泣いていたら
どうしようかな

なんて考えてしまう

…寒っ

…冷えてきたな

そんなことを思いながら、
階段降りてすぐの近くの木の下にあるベンチに
座りながら、ぼーっと空を見上げていた

トンットンットンッ

軽快な階段を降りる音がする

…帰ってきた

リズムカルな足音に少し心がほっとする

『江口さっ…きゃあっ』

ほっとしたのも束の間、可愛らしい悲鳴とともに、目で追っていた彼女が視界から消える

…危ないっ

目の前で足を滑らせ、前に倒れ
ふわりと浮く彼女の体 階段を数段落ちる

危ないから、走るのやめなー
っていう寸前の事だった

あ…綺麗だな
なんて

舞い散る銀杏や紅葉と共に
ふわりと舞い降りてきた栗色の髪の毛の天女

まるで落ち葉が羽衣みたいで、天女みたいだ
なんて思ったけど、数秒後に衝撃と僅かな痛みが走る …そして現実を見た

成人女性がそれなりの高さから落ちたら
まあまあ痛い 漫画とはそこが違うな…まじで

ドサッと俺の胸に無事着地する彼女
万事休す…か、これは。

｢…っぶなぁ…｣

落ちてきたのは君なのに
1番に気にしたのは俺の事

そんな点がちょっぴりもどかしくて、
ちょっぴり嬉しい
彼女の1番を貰ってる気がしたから

お互いに土を払う

すると彼女が、『あ、少し屈んでください』
って言うから 彼女の目線に合わせて膝を曲げた

彼女は俺の被ってるキャップの上に手を伸ばす

『…ふふっ、落ち葉ついてた』

変身でもするんですか？ってふわりと笑う彼女

前言撤回、天使だ、これは

まぁ、思うだけならタダなんで。
恥ずかしくて口が裂けても言えないけど

だから、俺もわざとらしく
｢あまりにも帰ってこないから、
変化途中でした〜｣なんて冗談を言う

そんな冗談を言い合っていたら、
彼女の鼻がほんのり赤いことに気づく

…ほらぁ

そう思って、彼女が途中で邪魔だからってとったマフラーを持ち、彼女にかける

『わっぷっ』

なんとも不思議な声を出した彼女
思わず笑ってしまう

｢いひひっ、なにその声〜
ほら、風邪をひいたら困るから｣

彼女は俺に巻かれてる間大人しくしていた

｢はい、できた｣
『ありがとうございます！あったかい！』

…あ、雀みたい

もふもふマフラーに身を包んだ彼女は
まるで真冬の雀みたいだった

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