第9話 ページ9
貴女side
『…いってきます』
そう、“彼” に笑いかける
しんみりしたら、彼に怒られそうで
元気に、笑顔を作って言う
ふと、思い出す───────
彼は私より、家を出るのが遅くて
バタバタと出る私に
『今日は雨が降るよ』って
その日の天気を伝える
渋々私も傘を持って出ようとすると
寝癖まみれの顔で
『行ってらっしゃい』って言う
どんなに忙しくても、眠くても
必ず行ってらっしゃいって貴方は言う
…だから、私も『いってきます』
って言ってたなって
そんなことを思い出していると
びゅーっと強めの風が吹いた
一斉に鮮やかに舞う、紅葉と銀杏
それはそれは綺麗で 幻想的で儚くて
…まるで貴方が『行ってらっしゃい』って
言っているかのようだった─────
──『ミルフィーユ』
…千枚の葉
まるで千枚の葉が重なったかのように
見えるから
だから、ミルフィーユのように
貴方との思い出を、愛情を込めて
千の…いや、沢山の想い出を込めて────
沢山の落ち葉が私を包む
その中に彼の大好きな金木犀の香り
私の大好きな金木犀の香り
大丈夫、きっと歩めるはず
大丈夫、背中は彼が押してくれたから
これが最初で最後の“彼”との約束─────
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だいぶ時間がかかってしまった
慌てて、石畳の階段を降りていく
いそげ、いそげ
不思議と足取りは軽くて
ポンッポンッと、階段を降りていく
嗚呼、彼に会いたい
そう思うと、さらに加速した
残り数段になると、彼の姿を見つけた
心が不思議とポカポカした
『えぐちさっ……きゃっ』
｢え、…って、雫！？｣
あまりにも、心が前に行き過ぎて
足が追いつかなかったようだ
階段を踏み外し、前に倒れる
…落ちる！！
『……いっ…たぁ…』
ふかふかとした感触
『……あれ、いた…くない？』
恐る恐る目を開けると
｢…っぶなぁ…｣
柔軟剤の香りと、彼の甘い香水の香り
｢…大丈夫？怪我してない？｣
ギリギリのところで彼が
受け止めてくれたみたいだ
『…すっ、すみません！！
そちらこそ！お怪我は！？』
…何をしているんだ、私は！
怪我をさせたらどうするの！？
慌ててぺちぺちと触り、
怪我をしていないか確認する
すると擽ったいと言わんばかりに笑い出す
｢いひひっ、ちょっ、なんで俺の心配してんの｣
『怪我でもしたら…』
それはお互い様でしょーが、って彼は笑う
…嗚呼、好きだなって
そう彼の笑顔を見るとほっとした
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雅 - eriiiさん» eriiiさん、コメントありがとうございます(*^^*)特別編見ていただけたようで嬉しいです。本編もどうぞよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年12月29日 23時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - 特別編ほっこりしました(*^^*)でも本編は不穏な流れですねー！今後の展開が気になります！更新頑張って下さい^ ^ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 5892b12f93 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、ありがとうございます。遅くなりましたが、季節的な特別編を。宜しければ(*^^*) (2020年12月28日 0時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 沢山の更新お疲れ様です！特別編良いですね(^^)毎回同じコメントになってしまい、すみません。続きが楽しみです。頑張って下さい！ (2020年12月27日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - Aさん» こちらこそ、いつもありがとうございます。コメントいただけてとても嬉しいです。ゆっくりですが、頑張りますね。素敵なコメント、いつもありがとうございます。 (2020年12月27日 22時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年11月23日 22時
