三月うさぎのアフタヌーンメモリーズ

第49話 ページ49

某スタジオにて

「あれ、江口さん、お疲れですか？」

そう声をかけてきたスタッフが
俺が飲んでいた栄養ドリンクを指さす

「あー、まぁーちょっと笑」

「最近更にお忙しいですもんね…
無理なさらずに」

「ありがとうございます」

そう答えて、飲みきった栄養ドリンクの瓶を、入っていたビニール袋に戻す

そのまま、生放送が始まるほんの少しの間
目を閉じる


朝から少しばかり喉に感じた違和感
そして、いつにも増して感じた倦怠感
寒くなってきた秋とはいえ、度々来る悪寒

全てのことを総合的にまとめた結果

…やべぇ、風邪ひいたかも

そのひとつの答えが出た

熱は測らない
見た瞬間、ダメになるから

なんだろうね、あれ
傷口とかも気づくまで痛くないのに、
気づいたら痛くなる、謎のあれ

熱もそう 数字で表された途端にダメになる体

病院も…まぁ、行かない
なんなら行く暇ないし、苦手だし

そもそも病院行くと待合室で熱測ると下がってたりしない？で、帰るとまた上がってたりしない？…しないか、俺だけか？

まぁ、とりあえず、そんなこんなあって態々行くほどでもないし

だから、昔からの俺流 治療法

やばいと思ったら栄養ドリンクぶち込んで
早めに寝る。これに限る

…ただ、今回ばかりは…やばいかも…

少しだけ…少しだけ寝たい

そう思いながら、うとうとし始めた

その時─────

「本番もうすぐでーす！準備お願いしまーす」

その声でウトウトしていた
瞼を無理やりこじ開ける

…いかなきゃ 今日の仕事もこれが最後だし
…頑張んなきゃ

「…うっす」

ぬ〜っと大きく伸びをして
生放送に俺は向かった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「──来週なんですけども…僕ちょっとお休みしますね！別なやつが重なって〜ごめんね〜たかみな〜」

「え！？また休むんですか！？江口さん！」
「お土産買ってくるから」
「えーじゃあ、キャビアで」
「キャビア？！」
「フォアグラでもいいですよ？」
「フォアグラ？！…いいですけど、次の週までだから…腐りますよ？」
「え！？そっか、じゃあ郵送で」
「住所知らんわ！笑」
「あ、大変江口さん！あと1分です！」

「…ってなことで、この辺で！来週も…僕は再来週！またこの時間に会いましょう〜！ばいばーい」

…何とか乗り切った
最後まで声も枯れなかったし

「…江口さん、大丈夫ですか？」

向かいに座ってたたかみなが
放送が終わって声をかけた

「ん？なにが？」
「顔色悪いですよ？」

…マジか

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