三月うさぎのアフタヌーンメモリーズ

第39話 『夢と現実』 ページ39

「…雫っ───」

ピピーッピピーッピピーッ

五月蝿く鳴り響くアラームの音

「…っはぁ…っ…ぃてぇ」

目覚めた勢いで体を起こすも、ソファーの上で寝落ちしていたせいか体の至る所が悲鳴をあげた

「…」

キョロキョロと、まだ眠い目を無理やりこじ開け辺りを見渡す

ソファー横のテーブルには、寝酒として飲んだ酒の瓶が空になって置いてあった
また、近くの床には、脱ぎっぱなしの服、
帰ってきたままの鞄が放置されている

あー…そっか

…たった3日でこの有様か

いつも見慣れた部屋なのに、
何だか今日は広く感じる

…嫌な夢

「…違うか、いい夢かも」

だって、夢で逢えたんだから

夢で逢えた彼女の温もりを思い出すように
そっと目を閉じた

…あーしんど

もう一度目を開けて、壁の時計を見る

…まだ時間はあるな

“予定”の時間まで、あと数時間
支度のするには十分な時間

急いで顔を洗おうと、洗面台に向かうと
思わず声が出た

「うわー酷い顔」

…少しばかり痩せた気がする

「…いかん、いかん」

気合を入れるかのように冷水で顔を洗う
秋の早朝の水道水は夏に比べて
遥かに冷たかった

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ある程度支度を済ませると、
俺はリビングのテレビをつけた

朝のニュース番組の
お天気お姉さんが
元気よく挨拶をする

「おはようございます」

俺はそのお天気お姉さんの
挨拶に答えるように小さく呟いた

「今日は、午後にかけて
雨の恐れがあり────」

…雨か、

「…雫、雨だって〜、傘さ…」

「…あっ、そっか」


静まり返る部屋に響くのは俺の声

天気予報なんてそんなに見なかったのに
気がついたら習慣の一部になっていて
これもきっと君のせい───

シャッ

しまっていたカーテンをあける

…なんとも眠たくなるような曇天

外の空気と中の空気の差で窓ガラスは
見事に結露しびちゃびちゃと濡れていた

キュッ

その結露した窓ガラスを指でなぞる
なぞった箇所から外がくっきりと見えた

「…探して、か」

夢で三月ウサギはこう言った

キュッキュッキュッ

結露した窓ガラスに描いた線を上からつぶす

…さ、行くか

玄関まで向かって、いつもみたいに靴を履く

朝起きて、支度して、靴を履いて
いつも通り、いつものルーティン

靴を履いて立ち上がる
ドアノブに手をかけ、1度だけ振り返る
そして小さく

「…いってきます」

いつも通りの朝

ただ、違うのといえば
返って来ない返事と、君がいない事だった

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