第38話: 『夢』 ページ38
サラサラと砂が上から下へと落ちていく
俺はその砂が落ちていくのを
ゆっくりと見つめた
そして、上の砂が全部下に落ちきった時
俺は何も考えず、
もう一度“砂時計”をひっくり返す
砂がひとつ、またひとつと落ちる度に
懐かしいと思える映像が頭に浮かぶ
ふと、昔読んだ童話にウサギを追いかけて
不思議な世界に迷い込んだ話があったな、と
…今いるこの空間は夢？はたまた現実？
童話にでてきたウサギは確か…白ウサギだっけか
気がつくと、俺も何かを追いかけていた
ふわりと揺れる栗色──────
…あれ、白いウサギではなく、茶色のウサギ？
…じゃあ、これは三月ウサギか？
そんなフワフワとした感覚の中で
俺は無我夢中で三月ウサギを追いかける
足はやっ…
どんなに追いかけても追いつけなくて
気がつけばどんどんと離されていく
…あれ？なんで俺は追っているんだっけ？
てか、三月ウサギって…
パチンッ
軽く瞬きをすると、先程までいた場所とは違い、俺は椅子に座っていた
目の前には、湯気がたっている
淹れたてのダージリン
甘い香りと、優しい温かさが俺を包む
…そうだ、これだ
三月ウサギと言えば…『お茶会』
無駄に長いテーブル
ふと、目を凝らすと、先程まで追いかけていた
三月ウサギが同じく席に着いていた
重かった口が、やっと開く
「…ここは？」
その質問には答えない
「…君は？」
その質問にも答えない
でも、何だかその三月ウサギは
懐かしい感じがした
どこかで会っている気がして
…俺は淹れたてのダージリンに手をつける
これ夢なんだから、ダージリンじゃなくて
ブラックコーヒーが良かったな、なんて
そう思って、カップに口をつけた
『…探して』
「…え？」
『…ずっと、待ってる』
「…待ってるって？」
口に広がるダージリンの香り
…あれ、ダージリンって…
ふと、向かいに座ってるウサギを見た
『…こんな所で寝たら、風邪ひいちゃうよ』
鈴の音のような綺麗な声
ふわりと香る甘い香り
これは、ダージリンの香りじゃない
これ、知ってる…俺
もう一度だけ、目を凝らす
風に靡く栗色の髪の毛───
栗色の…髪？
先程までの茶色のウサギはもう居なくて
優しい目をした栗色の髪の女性
『…ほら、起きて』
「え」
それは大好きな温かさで
それは大好きな温もりで
嗚呼、そうか
これは君が連れてきたワンダーランドと
気付いたのはその瞬間
花が散るように消えていく君に
俺は君の名前を呼んだ─────
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雅 - eriiiさん» eriiiさん、コメントありがとうございます(*^^*)特別編見ていただけたようで嬉しいです。本編もどうぞよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年12月29日 23時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - 特別編ほっこりしました(*^^*)でも本編は不穏な流れですねー！今後の展開が気になります！更新頑張って下さい^ ^ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 5892b12f93 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、ありがとうございます。遅くなりましたが、季節的な特別編を。宜しければ(*^^*) (2020年12月28日 0時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 沢山の更新お疲れ様です！特別編良いですね(^^)毎回同じコメントになってしまい、すみません。続きが楽しみです。頑張って下さい！ (2020年12月27日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - Aさん» こちらこそ、いつもありがとうございます。コメントいただけてとても嬉しいです。ゆっくりですが、頑張りますね。素敵なコメント、いつもありがとうございます。 (2020年12月27日 22時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年11月23日 22時
