第12話 ページ12
彼女と手を繋ぎながら、
会話をしながら銀杏並木を歩く
すると、彼女が懐かしむように
思い出話をし始めた
『彼ね?』
「うん?あー、百合さんに会う前に話そうとしてたこと?」
彼女の口から“彼”というワードが出ると少しばかりチクリとした
『そう。百合さんから聞いた?…彼ね』
「うん」
『若い頃に両親をなくしてて、百合さんって彼の親代わりに育ててくれた方なの』
…そう、これは俺も百合さんから聞いた話
「うん、そうみたいだね」
『だからゆりさんに恩返ししたいからって、早く1人前になりたかったっていつも頑張ってて』
『そんな背中をいつも見てたの』
「うん、凄い人だね」
『でね?そんな彼はある時言ったの』
「うん?何を?」
『俺と一緒に幸せになって欲しいって』
秋風が銀杏並木を通る
そしてザワザワと葉がぶつかり音が響く───
彼が彼女に送った言葉で
彼が彼女に最後に残した言葉
…プロポーズ
本当は聞きたくないけれど、
きっと普通のカップルはしないのだろうけど、
ちゃんと聞いてあげようと
彼女の話を真剣に聞く
…だって、愛した人が愛した人だから
笑っちゃうよね、って彼女は笑う
「えー?素敵なプロポーズじゃん」
『ふふっ、どうせなら君を幸せにする!って言って欲しかったな〜』
「手厳しいねぇ〜」
『…彼はさ』
「うん」
『結婚して、家族を持って、最後は2人でのんびり暮らして…そんな幸せが欲しかったんだと思うの』
「…」
『…だから、私だけなんて…
って思ってしまってたから』
彼女が大切にしていた彼からの言葉は
いつの間にか、ある意味足枷になっていたのか
大切にしてたからこそ、その言葉に囚われてたんだなって彼女の話を聞いて思った
『はい!この話はおしまい!お腹すきましたね!なに食べますか?』
そう、先程とは変わって笑顔で俺に振り向く
嗚呼、なんで気づかなかったんだろう───
…俺は馬鹿だった
「ちょっとまって、あそこ行こ」
銀杏並木の少し行ったところにベンチがあった
彼女の手を引き、ベンチへと向かう
『…疲れちゃいましたか?』
そう尋ねる彼女をベンチに座らせ、隣に座る
「ちょっと飲み物買ってくる、何がいい?」
『えっと…あ、じゃあ私も行きますよ?』
「いーからいーから、何がいい?」
『じゃあ…カフェオレで』
ホットで!って言う彼女の声を聞きながら、
自動販売機へと向かった
138人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅 - eriiiさん» eriiiさん、コメントありがとうございます(*^^*)特別編見ていただけたようで嬉しいです。本編もどうぞよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年12月29日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - 特別編ほっこりしました(*^^*)でも本編は不穏な流れですねー!今後の展開が気になります!更新頑張って下さい^ ^ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 5892b12f93 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、ありがとうございます。遅くなりましたが、季節的な特別編を。宜しければ(*^^*) (2020年12月28日 0時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 沢山の更新お疲れ様です!特別編良いですね(^^)毎回同じコメントになってしまい、すみません。続きが楽しみです。頑張って下さい! (2020年12月27日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - Aさん» こちらこそ、いつもありがとうございます。コメントいただけてとても嬉しいです。ゆっくりですが、頑張りますね。素敵なコメント、いつもありがとうございます。 (2020年12月27日 22時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雅 | 作成日時:2020年11月23日 22時