第226話 ページ26
｢…雨、止まないね｣
『…そうですね』
そんな会話をしながら
そっとボタンに手をかける
……夢を見ているんじゃないか
そう思った
ここで抱きしめてしまったら…
朝、目を開けたら
隣に彼女は居ないんじゃないか
そんなことをふと思う
俺は長い夢を見ていたのかも、と。
…長い間待っていたから
ふと、再び彼女を見る
透き通った瞳には、真っ直ぐ俺を見つめていた
ずっとずっと願っていたこと
……彼女の瞳に映ればな、と。
俺だけを見てくれはしないだろうか、と。
誰かと比べた俺ではなくて
純粋に、本当の俺だけを─────
そんなことを思ってしまったから、
彼女の体温を確認するかのように
俺は、片方の手で彼女の頬に触れ、
そのあと指を絡めた
ゆっくりと彼女は暗闇という色のドレスを纏う
闇夜に浮かぶ白い肌は
夜を照らす月のように美しかった
｢……怖い？｣
彼女の首筋に顔を埋めながら
口付けをおとし問う
『……少しだけ』
｢…大丈夫、そばに居るから｣
『……はい』
きっとこの雨は朝まで止むことは無いだろう
……だから、今だけは
……この雨が止むまでは
彼女に触れた指先が、びりびりと痺れた
白い肌に噛み付けば、甘い吐息が漏れ出す
くらりとめまいがするような感覚
……まるで、毒林檎でも食べたかのように
……嗚呼、可笑しくなりそうだ
するりと彼女は、俺の首に腕をまわす
｢……泡になって消えたりしないよね｣
天井にうつる、窓からの薄い光が
まるで水の中にいるみたいで
ふと、水族館での彼女の笑顔を思い出して
不安になって彼女に呟くように言った
『……ふふっ、泡になったら見つけて下さい』
そんなふうに彼女はまた意地悪を言う
｢…そりゃまた、大変なことで｣
『……できますよ、きっと』
…私を連れ出してくれたんだから
そう言うと彼女はぎゅっと俺を抱きしめる
触れてる箇所から、お互いの体温を感じた
｢……ねぇ、雫…好きだよ｣
あ、そっか、初めての呼び捨てか
『……私も』
『好きです、拓也さん』
耳に響くのは雨音と
彼女の透き通る声
俺らの恋は、雨から始まって
曖昧で歪な関係は雨で終わりを遂げた
雨音が聞こえる度に、君を思い出す
笑った顔も、泣いている顔も……
雨粒が落ちるように思い出が蘇ってくる
もし、この恋に名前をつけるなら……
もし、この恋の病に名前をつけるなら……
それはきっと……
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雅 - Aさん» Aさん、コメントありがとうございます。・・・好きな場面まで！ありがとうございます。感想を言って下さるのはとても嬉しいです。今後の参考にさせていただきますね。 (2020年11月26日 0時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、最後まで読んでくださりありがとうございました(*^^*) (2020年11月25日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - afterstoryもとっても素敵でした！！個人的に花言葉入ってるのがすごく好きできゅんってしました；； (2020年11月25日 12時) (レス) id: a957c976a9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - こちらこそ、素敵な作品を作って頂きありがとうございました！リクエストした宏太朗くんの話も素敵でした！２人の幸せが伝わる感じでした(^^) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、リクエストありがとうございました。おまけ話は完結させて頂きました。毎回コメントもありがとうございます。こちらの作品はこれで全て終わりとなりました。今まで読んでくださり大変ありがとうございました。 (2020年11月23日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年10月21日 22時
