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｢動くな!!｣
男は私の首にナイフを当て、拳銃を先輩に向ける。
｢Aっ!?｣
｢動いたらこの女を殺す。大人しく武器を捨てて手を上げろ。｣
先輩がチラッとこちらを見たので打開策はないですという意味を込めて苦笑いをしておいた。
カランと先輩のナイフが落ちる音がする。ゆっくりと手を挙げて何かを考えているようだ。
｢おい、それ寄越せ。｣
男は私のガスマスクとインカムを手に取り、壊した。
『…っ』
｢こんなもの持ってきて…お望み通り堪能させてやるよ!!｣
男は私を突き飛ばし手榴弾のようなものを投げ、部屋から逃げようとする。
手榴弾のようなそれは床に触れると粉を撒き散らし、部屋中に粉末が充満する。
考えるまでもなく理解した。私たちが目をつけていた薬が今この場で撒かれた。ガスマスクを1つ壊された、この状況で。
｢A！｣
先輩の声が聞こえると口元に何かが押し付けられる。
『…っ!!先輩っ!!離して下さい!!これじゃ、先輩が!!』
涙目になりながら必死に抵抗する。押し付けられたものがガスマスクであると気づいたと同時に、先輩の安全を保証するものがなくなっていることに気づいた。
それでも、どんなに抵抗しようとも、覆いかぶさっている先輩の力に勝てるはずがなかった。
『…先輩、もう大丈夫です。すみません。……先輩？』
部屋の様子が落ち着き先輩に声をかけるも、どこか様子がおかしい。
｢…っ、ふ､､､ぁﾞ、A､､､すまん、ｯ､､､気絶させて、くれへん、、？｣
『っえ、？』
｢このまま、やと、、っふ、Aんこと､､､殺して、まう､､｣
頼む、と顔を歪める先輩の願いを断れるはずもなかった。首に手刀を落とし、先輩が気を失ったことを確認する。
……連れて帰るか､､､。
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作者名：クルト | 作成日時：2022年6月23日 23時
