来年の事を言えば鬼が笑う

40 F ページ40

「俺を愛してるって！？え、」


水没してしまっただろうベタベタなスマホを片手にバスタオルが腰に巻かれていて上半身丸見え。
よくそんなんで変な奴に今まで襲われず無事でいれたな、と心配になる。
男だから、上は隠さないのはまぁ普通だけど。


そのまま俺の目の前に来て、しゃがみ膝を立てると手を畳につきグイグイと顔を寄せてくる。近寄ってくる北山に理性が切れそうになったけど、何とか保つ。
濡れた素肌が眩しい･･･、ってそうじゃなくて。



「たいすけは、藤ヶ谷なのか！？」



畳に置かれたスマホの画面は暗い。あ、壊れたな、あれ。



「俺を騙してたのか！？」
「騙してねーよ。偶然」
「偶然なんてある訳ないだろ！そんな･･･、偶然なんて･･･！」


だよな。俺もそう思う。
もし、あの夜･･･このサイトを見つけて登録してなかったら。結成記念の食事会で感じたどうしようもない気持ちから逃げ出したいと、思わなければ。
サイトを探すことはなかったかもしれない。



偶然、だけど。
あれは13周年目のキセキなのかもしれない。



「よく思い出してみて？先に俺にメッセージくれたのは、俺じゃない。北山だろ？」
「あ」
「騙すも何も。北山からメッセージを送ったでしょ」
「･･･確かに、俺からだけど」



最初の頃を思い出したのか、興奮から覚め少し冷静になる北山。でも、不思議そうに眉を寄せ、唇を尖らせている



「北山のことが好きで、紛らわせたくてサイトを偶然見つけて登録した。そこに北山からメッセージが偶然に着たんだ」
「･･･、」
「最初はもちろん北山だと分からなかった。プロフィールも全然違うしね。でも、惹かれていった。北山しか愛せないと思っていた自分がいとも簡単に」
「･･････、」
「そんな自分に疑問を抱いた。ひろはもしかしたら北山かなって。帽子を買ったと言った次の日、新しい帽子を持っていたし」
「･･･！気付いてたのか！？」
「ん？言ったじゃん。夢の国でも」
「そうだけど！あの帽子あの日が初めてじゃ･･･」
「そんなの知ってるよ。あの日が2回目でしょ？」
「･･････！」



北山はただでさえ丸い瞳を更に丸めていく
だけど尖らせていた唇はきっと自然とだろう、綻び、口角が緩み上がっていた。



「その夢の国へ行った日に確信した。お前がひろだって。」
「･･･！そんなに早く！？何で言わねーんだよ！」


やりとりを思い出し恥ずかしいのか、今度は手で顔を覆う北山。
･･･可愛い。

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