来年の事を言えば鬼が笑う

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『先、お風呂入ってきたら？』


そう告げられたらもう、それを断る理由もなく、藤ヶ谷先に入れよと返しても、藤ヶ谷は俺は少し休みたいからと横になったので…有難くも用意された浴衣を手に取り、室内にある貸切露天風呂へと来ていた。


どうしよ、どうしよ。
これが二階堂なら何も問題なく、おっし！風呂だーとはしゃげたけど、さすがにはしゃげる状態ではない。


とりあえず全身を洗った後、手を拭き持ってきていたスマホを手にとり、湯船に浸かった。



藤ヶ谷、と。
ひとつ屋根の下。
貸切露天風呂･･･
宿泊！？！？


フリーズしそうな思考から、どうにか冷静に男らしく保ちたくて、デート中であろう"たいすけ"にメッセージを送った。
返ってこないのを承知で。



ひろたいすけ、デートどう?助けて!俺、好きな人と旅館で宿泊することになったんだけど!!!


もう、なんて言うか心の叫びだった
文字にして、落ち着きたかったのもある


すると、意外にも数分後、既読になり


たいすけすごいじゃん。俺も今そんな感じ。告白しようと思ってる



そう返ってきた。
･････････告白。
たいすけのその言葉に、一気に頭が冷静になる。
冷めていく。



藤ヶ谷が好きなのに、どこか痛む。それは胸の奥。
･･･藤ヶ谷と今ひとつ屋根の下、なのに。
何を違うやつのことで傷ついてるか、不明だ。



ひろ･･･たいすけは、男同士に未来があると思ってんの?先のことを考えて不安じゃねーの?



ああ、もう。
最低だ、本当に。
こんなこと言うべきじゃないのに
背中を押すべきなのに。それしかねーのに。
何を送って、



たいすけ来年の事を言えば鬼が笑う。不安じゃないよ。だって愛してるから。



"来年の事を言えば鬼が笑う"
さっき聞いた言葉ーー･･･
こんなとこまで一緒なんて、そんな。


いやだ、と、られたくない。
とられたくない。たいすけを。他のやつに。
それは藤ヶ谷と重ねてしまってるかなんて、分からない。でも、とられたくない。


ひろ･･･俺は、たいすけをその人にとられたくない。告白しないで。･･･たいすけが、好き。



訳がわからなくなってる。
現実と擬似の境界線が薄れている



そう指先がメッセージを送っていた。


好きなのは、藤ヶ谷なのに。
･･･たいすけも、好きなんて。
もう自分が分からない


たいすけふざけんな。浮気者!


･･･え？

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