来年の事を言えば鬼が笑う

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着いたというメッセージを受け取り、急いで部屋を出てエレベーターで下まで降りた。


エントランスの前には、車が止まっていて、窓越しにサングラスをかけてる藤ヶ谷が見えた


･･･似合うな、サングラス。
夏の男って感じ。


挨拶をして助手席に乗ると、シートベルトをつける。
カチッとシートベルトが音を立てたら、車は発進した。


「･･･どこ行くの？」
「秘密」


･･･まだ秘密なんだ。
事前に用意していたペットボトルを袋から取り出し、藤ヶ谷に渡そうとすると、運転席のドリンクホルダーにも助手席のドリンクホルダーにもペットボトルが置いてあった。


「あ、それ飲んで？」


俺が好きなコーヒーのラベル。
･･･なんだろ、この。
完璧具合･･･


「この曲･･･」


その曲は俺がリピートしてよく聞いてる曲だった。
スピーカーから流れる耳馴染みの音楽に震えそうになる


「北山この曲よく聞くって言ってたでしょ？」


藤ヶ谷には直接話した覚えはないけど
確かに楽屋とかで玉ちゃんたちに話したことはある


･･･知っててくれたんだ。


コーヒーに音楽に
スマートすぎて。
キングすぎて。
さすがだと、褒めたい衝動に駆られる。


「･･･藤ヶ谷、お前すごいな。なんつーか、世の女性をイチコロに仕留めそー」
「･･･そう？」


キング･･･は番組の中だけじゃなかったなんて


「･･･何か寂しいなぁ･･･、成長したんだって改めて想うと」
「･･･寂しい？」
「そう。まぁ、お前より年上だし？兄としてっつーか」


藤ヶ谷のが先輩だけど俺のが年は上だから
やっぱり、そういう風に見てしまう部分もあった



「･･･北山を兄なんて思ったことないけど」
「あー、うん。そうだよな、ごめん」


急に声が低くなり、あからさまに機嫌が悪くなる藤ヶ谷。
ため息をついたあと、沈黙が車内に訪れ、お気に入りのBGMがひたすら流れていた



「北山ってさ、鈍感って言われたことない？」
「･･･えー？あ、･･･ねーよ」
「絶対嘘だ」


沈黙を破ってくれた藤ヶ谷は
少し笑ってこっちをチラッと見た


「なんだよ、嘘って」
「･･･結構アピってるつもりなんだけど」
「アピるって何を？」
「･･･まぁ、いいや」
「なんだよ！」
「･･･お前本当に気付いてねーの？」
「あ！わりぃ！そうだった！」
「･･･なにそれ」
「ETC！高速乗るならいるだろ！」
「もう入ってるし」
「ダメ！俺が払うから」


準備していたETCを藤ヶ谷に差し出すけど受け取ってくれない

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