来年の事を言えば鬼が笑う

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雑誌の撮影を終え、メンバーとは解散になる
次の撮影は藤ヶ谷と二人の撮影だった。
そのままバンに乗せられ二人でスタジオへと向かう。


バンは何列もあり、スタッフさんは他の車での移動、そして違う雑誌の撮影ということもあり、運転席にマネはいるけど、後部座席には俺と藤ヶ谷ふたりだった


広い車内、近くに座る必要もなく、藤ヶ谷は右側の最後部座席、俺は入口付近の左側の座席へと座っていた


さっき藤ヶ谷から受け取ったミニ扇風機は膝に置いたまま、車内は必要がないぐらいクーラーの風で冷えていた


･･･むしろ、寒いぐらい。
汗が乾き、少し冷える


「すみません、寒いので少し温度上げて頂けますか？」
「あ、すみません！上げますね」


そんな時聞こえてきた後ろからの声に思わず振り向くと声の主は勿論ここにいる藤ヶ谷。
藤ヶ谷は寒い寒いと仕草をするかのように、腕を摩っていた


･･･藤ヶ谷も寒かったんだ、良かった。


藤ヶ谷が暑いじゃないかと思って言い出せなかった。最後列だとクーラーが効くのも悪い気がして。
最近の車は違うのかもしれない。
さすがに最近の技術は進歩してるんだなと関心してしまう



クーラーの風力がおさまり、車内は快適な温度に変わっていく


心地よい温度に安心し、イヤホンをつけ、窓にもたれ瞼を閉じる。
イヤホンから流れるのは、藤ヶ谷のソロ曲


結構前のライブの曲だけど
この曲が大好きだった。


(･･･間違っていても、君を愛してる)


何度も聞いてる曲、
自分が思っていること
そう。間違ってる。
メンバーを愛してる、だなんて
男を愛してる、だなんて


綺麗な藤ヶ谷の声が耳を通して
心に入っていく


瞼を閉じ、藤ヶ谷を全身で感じる


後ろに本人がいるのに


気持ちを伝えるのは怖かった
良くなってきている関係も
一瞬で壊してしまうかのようで


今は笑っていてくれても
来年は笑ってくれていないんじゃないかと思って


現実を知るのが怖くて
擬似的(バーチャル)に逃げているのかもしれない


夏休みはもうすぐ終わってしまう。
たいすけも本格的な仕事が始まり、忙しくなるかもしれない


閉じた瞼をゆっくり開け、スマホをポケットから取り出した。


ひろお疲れ様!たいすけは最近好きな奴とどうなの?花火とか誘ってみたりしてる?


せめて、たいすけが好きな奴と結ばれれば俺も報われるかもしれない


男同士の恋愛に未来を見ることができるのかもしれない。

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