来年の事を言えば鬼が笑う

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藤ヶ谷が後ろにいることにも気付かず何をやってんだ、俺は。
せっかくメッセージのやりとりも順調で関係だって良好でドライブの約束だってこぎつけてるのに。



他のやつのことを気にしてる、だなんて。
たった数週間やりとりをしただけの相手を気にしてる、だなんて。



「まるで誰かの連絡を待ってるみたい」


無神経にも続ける二階堂に若干ブチ切れそうになる
いや、二階堂は何も悪くない。わかってる、そんなこと。


「･･････待って、ねーから」


そう返した声は自分が描いてる声より幾分か低く車内に響いてしまった


「･･･え、みつ怒ってる？」
「怒ってねーよ。ほら、行くぞ」


一瞬、ビビってしまったような二階堂の表情に気づき流石にまずいと想い笑いかける。


すると二階堂も笑い返した


「久しぶりにブラックみつの登場かと思ったじゃん！」


･･･こいつの笑顔も可愛いな。
いつまで経っても少年、みたいな。
色気は昔のがあったかも、な？



「･･･藤ヶ谷はメイクいいのかよ？」
「何言ってんの。ガヤはもう終わって待機してるんだよ。みつ、本当に大丈夫？」


いや、大丈夫なんだけど。
･･･大丈夫じゃないのかも。


サイトは退会した方がいいのかもしれない
架空の人物に夢を抱きすぎ
現実世界を生きることに支障をきたしてきている


目の前を通り過ぎただろう藤ヶ谷さえを見過ごして。


「･･･北山、」


バンを出ようとした時、後ろから声が聞こえてきて振り向くと、藤ヶ谷がこっちへと歩いてきていた


「･･･体調悪い？」
「いや、」


目の前まで来た藤ヶ谷は、ミニ扇風機を差し出してきた。･･･って！だから、どこから！？
そこにも四次元ポケットあったの！？


あー、もう、可愛い！！
一瞬で暗い気持ちを明るくさせてくれる


そのミニ扇風機は、あの日のもの。
あの宝物の時間


首にかけられると、ご丁寧にファンが回り出す
前髪を浮かせる風力が少し擽ったい。



「え！何それ！めっちゃいいじゃん！俺のは！？ガヤ！！」
「ないけど」
「えーーー！」
「お前の好きな藤北見えて良かったじゃん。VIP席でしょ」
「た、たしかに」



そう言ってクシャっと髪を撫でられ、藤ヶ谷の綺麗な手が俺の髪に触れる
･･･ドル誌以外で、こんな。
二階堂もいるのに。可愛い藤ヶ谷を見せたくない！


「二階堂！藤ヶ谷見て紅くなんな！」
「は！？え！？そーいうわけじゃ！」


藤ヶ谷は一瞬で俺を明るい気持ちに戻してくれる
やっぱり魔法使いだ

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