来年の事を言えば鬼が笑う

26 ページ26

「･･･ドライブか」


ドライブなら緊張せずまた楽しめそう
藤ヶ谷と向き合うと照れてしまいどこに視線を向ければいいか分からなくなる



「･･･たいすけ、俺、ドライブまで行けるらしーよ」


独り言のようにポツリポツリと紡ぐ言葉
誰に向ける言葉でもない、自分自身に向けている言葉


「たいすけも、好きなやつと上手くいってるのかな…」


頑張る、って言っていた。たいすけに惚れられて、拒むやつなんているのだろうか？
想像がつかない。


仕事仲間･･･って言ってたから。
相手も幼稚園の先生･･･かな？
それとも、教材の営業さん？
たいすけも可愛いだろうから、体操のイケメン兄さんに狙われたりしてんじゃねーの？


･･･逢ったことも、顔も知らねーのに。
勝手に創造されている俺の中のたいすけは完璧だった。


それは、まるで藤ヶ谷のように。


藤ヶ谷と重ねてしまうから嫉妬だってしてしまうんだ･･･


「くだらねー」


規約でたいすけとは逢えないのに。
規約でなくとも、俺は仮にもアイドルだ。
逢うことは絶対に出来ない


逢うことすら出来ない相手にこんな感情を抱いてしまうなんて。虚しいにも程がある。


あの夜からだった
翌日の夜、たいすけから返ってきたメッセージは少し素っ気なく感じてしまい、そこから回数も減ってきたのは。



「･･･北山さん、どーしたの？」
「･････････」
「みつ？」
「え、あ、なに？」
「何ボーとして。次、俺らがメイクだって」
「あー、さんきゅー」


いけない、
あの夜のことを考えてしまっていた
手元のスマホはもう日中にあのアプリが鳴ることはなくなってきていた…


二階堂に呼びかけられるまで全く周りの声が聞こえてなかった。
今日は雑誌の撮影のため、ロケに来ていた。
バンでボーとしていたみたいで。


「･･･最近、みつ何か元気なくない？スマホばっかり気にしてる」
「･･････そんなことねーよ」
「そんなことあるよ！ね？ガヤもそー思わない？」
「･････････は？」


二階堂がそう言いながら振り返りその先を見ると、バンの後ろの座席には藤ヶ谷が窓にもたれてイヤホンをつけていた


イヤホンをつけていたにも関わらずすぐその二階堂の声に藤ヶ谷は反応してあげていて、俺に振るなというように返していた


「みつ、最近絶対変！スマホばっかり気にしてるし」
「･･･んなことねーって！もう行くぞ」


ゴタゴタと繰り返す二階堂に気まずくなりその場から離れようと立ち上がった

27→←25

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す