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そんなゾムさんのことが見てられなくて、
｢大丈夫、です。だって私、そんなこと話してなかったでしょ？｣
と声を掛ける。すると、ゾムさんはすかさず
｢せやからやん、なんも知らんのに、酷いこと言って｣
と返すものだから、私もそのまま思っていることを話すことにした。
｢だから、大丈夫。何も知らない人を疑うのは当然でしょ、私も、ゾムさんのことなんにも知らないから怖いって思っちゃった｣
｢それは、あんなことしてるんやから、当然やん！！｣
｢でも、今、私の事知って、苦しいんでしょ｣
｢……｣
｢同じだよ、私だって今日2人で荷物を取りに来てなかったらゾムさんの事、怖いままだった。ゾムさんが最低って言うなら、私も最低だね｣
ひとしきり喋って笑ってみせれば、またゾムさんは俯いてしまう。震える手を我慢してゾムさんの頬にそっと触れてみれば、
｢お前、ほんま、何処まで優しいんや｣
なんて言いながらする、と私の手に擦り寄るので、昔母がやってくれたのと同じように頬を撫でてみる。
｢ね、ゾムさんは悪くないでしょ。｣
出来るだけ優しくそう言えば、
｢あんな言い方されたら、頷くしかないやろ｣
ゾムさんはいつの間にかにっこりと笑っていて、すまんな、変な事言ってしもうて、と言いながら立ち上がる。それから振り向いて私の方に手を伸ばして、
｢んじゃ、帰ろ。｣
と眩しく笑うのだった。その手を取れば、引いて立ち上がらせてくれて、ヴェールも元の通りに戻してくれる。ありがと、と言えば、
｢ううん、それより荷物貸して｣
と私の手から鞄を取りあげて、歩き出す。それから私達はまたゾムさんがイタズラをしながら城へと帰るのだった。
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
