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自分の記憶を必死に引っ掻き回す。あれでもないこれでもないと手にとっては捨てるを繰り返す。この人の断片を私の中に確かに感じるのに、それを自覚できないもどかしさ、確信できない不安が私を覆い込む。
いつの間にか視界に捉えていたはずのグルッペンさんの赤色を何処かに見失う。喉元が苦しい。頭が痛い。はくはくと口を動かしてどうにか空気を取り込もうとする。こんなことで直ぐにパニックになるのは直さないと。
｢……無理に思い出すな。｣
目の前が暗くなる。思考が停止して、次に降ってきた声を解読するのにしばらく時間を使う。鼻腔をくすぐるのはおしゃれな______ラム酒ほど酒っぽくないがそういう感じの_______香りで、私はそれをグルッペンさんからする匂いだと気付く。つまり、状況を把握するのに10秒はかかった。
抱き締められている。
私は思わず肩を上げてしまう。いや、声も出たな。冷静になった私がさらに羞恥を煽ってしまう。グルッペンさんは気にも留めていないようでそのまま続ける。その声色がやはり穏やかで私はやけに安心する。
｢お前が無理に思い出すより、今のお前と昔より思い出を残せればそれで…………｣
それで、と言ったところでグルッペンさんの口が止まる。私はそこまでの彼の発言でキャパシティを超えてしまい、動揺を隠せない。どうしてそんなこと平気で言えるんだ、と思っていたが彼も彼で自分の発言に気付いたらしく、耳まで頬を赤く染めて物凄い大きな声で
｢聞かなかったことにしろ！！｣
と叫んでいる。私はそれを見てもっと訳の分からない思考になる。ヴェールの上から顔を両手で抑えてから叫んだ。
｢む、無理ですよ！！何言ってるんですか！！｣
｢俺もわからん！！！なんで、なんであんな恥ずかしいことよう言えたな！！！！｣
｢ほんとですよ！！！！｣
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
