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それから、空っぽになったティーセットを下げようとすればどうしたことか、グルッペンさんも一緒に行くと言い始めた。そういえばシャオちゃんがグルッペンさんは言い出したら聞かないと言っていたな、と思い出す。仕方ないか、と考えるのをやめて、立ち上がる。グルッペンさんは私の隣を歩く。二人でオスマンさんの所へ行ったらオスマンさんはニヤニヤとグルッペンさんを揶揄う。
｢はえ〜、どうしたん、グルッペン｣
｢いやお前こそなんやその顔。｣
｢いやぁ？なんでもないめう〜｣
グルッペンさんは大きくため息をついて、オスマンさんはご機嫌なご様子だ。私は、それを眺めてはふふ、と笑う。あんな雲の上の人達がこんな風に近くに居るのがら今までのことが、やっぱり夢なんじゃないかなと思う。実際これは半分偶然で、その意味では夢ではあるのだが。当の本人達はまた友達として笑いあっている。
オスマンさんと別れた後、逃げようとするグルッペンさんをトントン様のいるお部屋までお連れする為にまた彼の右隣を歩く。
｢A｣
｢はい｣
左から視線を感じて名前を呼ばれて。私はそのまま返事をして。視線を送れば高いところから私を見下ろして満足気に笑うのがヴェール越しに薄ら見える。
｢どうしたんです｣
｢いや、懐かしいと思ってな｣
一体この人はどうしたんだと言うんだ。まるで映画でも見ているような気になった。彼の顔は絵になるのでそのせいもあるが、声色が柔らかく優しくて。ぶわっと顔に熱が集まっている気がする。彼は覚えているからだろうか。だとしても離れてかなり長く経つのにどうして確信しているのだろうか。浮かんでくる疑問より、私の顔を覗き込んでいたくすくすと笑う彼に目を奪われて、気を取られてしまう。
｢あぁ、お前は本当、変わらないな。｣
｢……や、やめてください｣
｢ふ……無理だ。すまん。｣
｢な、どうして｣
｢そんな反応見せられちゃ、またやりたい｣
悪戯に笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
あぁ、知っている。私はこの仕草を、手を、知っている。
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
