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｢わ、いい香り……｣
と言えば、エーミール様は
｢紅茶はお湯の温度で香りまで変わるんですよ｣
と教えてくださる。流れる空気が穏やかで、緩やかで、居心地がいい。オスマンさんによるとエーミール様の入れる紅茶はかなり美味しいらしい。今度教えて欲しいと言えば
｢もちろんです。｣
と優しく微笑まれる。また一段と穏やかな雰囲気のまま、お茶会はスタートした。
･
｢こういうのってお互いを知るのにいい時間だよね｣
なんてオスマンさんの一言から、もう少し詳しい自己紹介をすることになった。とはいえ私はお二人のことを詳しく知れるのは嬉しいのだが、私の話はそんなに面白いものでもないと思うのだが。
｢俺は、そうだなぁ、あ、甘いものがすっごく好き！かなり目がないかな、可愛いものとかも好き。Aちゃんの服、可愛いめう〜｣
オスマンさんはそう言いながら紅茶をすする。可愛いものが好き、甘いものが好きってますます女の子のようで私が
｢オスマンさんの方がよっぽど可愛い……｣
とこぼせばそれを聞いたオスマンさんはふわりと笑って
｢ありがと〜｣
と言うので、私に勝ち目はなかった。ずるいなぁ、なんて思いながら私もカップを口に運ぶ。オレンジの爽やかな甘みが口に広がる。
｢じゃぁ私も。私は国立の大学の教授をやってて。でも暇なんですよね、だから図書室とかにふらふらっと。そのうちお茶を入れるのが上手くなりましたね。｣
エーミール様はかなり博識な方であることは城下でも話題で、大抵聞かれたことにはしっかりとした根拠の上で返答してしまうとか。お茶を入れるのがお上手、なんて情報は初めて聞いたけれど、本当に美味しい。
｢ね、じゃあ次はAちゃんの番ね｣
とうとう順番が回ってきてしまって、私はうーん、と首を傾げる。私は人見知りなので自己紹介なりがあまり得意じゃないのだった。何から話せばいいのか分からないでいれば、
｢あ、じゃあ俺質問するから！答えて？｣
と気を回してくれるオスマンさん。それに思わず肩の力が抜けてうん、と答えればオスマンさんは嬉しそうに質問を始める。
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
