69 ページ29
こちらは薔薇園のようだ。私とエーミール様はバルコニーに通される。私はそのまま設置してあるテーブルの所へ座らされる。
｢じゃあ用意するから待ってて。エミさんと準備してくるから。｣
｢今日はどの茶葉にしましょうか。｣
オスマン様はルンルンで準備を始めてしまう。エーミール様もその後に続いて紅茶の用意を始めた。私は後ろめたくてバルコニーの扉のところから、
｢お手伝い、したいです｣
と言えばオスマン様は
｢Aちゃんは俺に敬語使っちゃうからダメめう〜｣
とウィンクなさる。そうだった、この人にも敬語や敬称を改めるように言われたんだった……と気が付いたが、今訂正したところでオスマン様に丸め込まれるので後日きちんとお礼をしようと開き直って大人しくバルコニーに座る。自然な仕草で空を見上げれば一面、綺麗な青で埋め尽くされている。そこに金色の糸を垂らして遊ぶような太陽の光に目を細める。何を見ても総統様のお顔が思い浮かんで仕方ない。これを、一体なんと呼べばいいのか。総統様の喋り方や仕草が少し懐かしい気もする。なんでだろう。それとあの声の意味はと少し目を伏せて考えていれば、
｢はーい、おまたせ〜｣
とオスマン、さんとエーミール様がやってくる。私は咄嗟に
｢あ、すみませんほんとに。｣
と口走る。
｢敬語｣
｢うっ……｣
しまった、咄嗟に出たのが敬語だった……と頭を抱えると
｢オスマンさん、あんまいじめてるとどっかの総統さんにブチ切れられますよ｣
とエーミール様が助けてくださる。それに乗じて
｢以後気をつけるから、許して？｣
と告げると当の彼はボソッとあいつの方が、と呟きながら今回だけね、と言ってオスマンさんは紅茶の紹介をしてくれる。
｢今日はね、フレーバーティーにしてみたよ。ほら中にオレンジが入ってるの。分かるかな｣
確かに覗いたティーポットの中には輪切りのオレンジが入っている。確かフレーバーティーは茶葉を着香したものだった気はしたが多分これも後入れで、着香もしていることは香りでわかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
