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昼食中、総統様のお顔が視界に入ってしまう。そのせいで色々考えて虚空を見つめる私に｢書類に集中しとったら遅れてもうた！！！｣と一番最後にやってきた為隣にお座りになったトントン様と、｢ごめーん、｣といつも通り少し遅れていらして正面にお座りになった鬱さんが
｢……ちょ、Aちゃん？そこになんかおるん？｣
｢こりゃあかんな、A〜大丈夫か〜、飯冷めるぞ〜｣
と声を掛けて下さる。現実に引き戻された私はハッ、として
｢私……またですか、ごめんなさい｣
と声を出して、考え事をやめ食事を再開した。考え事とはゾムさんとお庭であった時に聞こえた総統様の『声』の事だったのだが、当の本人はオスマン様と難しそうな話をなさってそれからエーミール様とも談笑なさっている。あの少し掠れて、苦しそうなあの人の声は一体。どういう気持ちだったのだろう。何に対して。昼ごはんは和食でこくり、と喉に味噌汁を流す。今日のだしは昆布だしと鰹だしらしい。柔らかい味にふう、と息を吐き出す。
｢そんなに悩んどるんやったら、俺話聞くで？んー、せやな……やっぱカフェ行かへん？｣
鬱さんが少し思案顔をしてそれから口を開いた。やっぱりこの国の幹部の皆さんは、いやこのお城にいらっしゃる方は皆さん優しくて嬉しくなってふふ、と笑いが込み上げる。
｢大先生、書類｣
隣のトントン様が鬱さんを睨みつけるようにしてぼそ、と呟き為さる。それを聞いて私は
｢ありがとうございます鬱さん。だけどもし、鬱さんが書類仕事が終わっていないのでしたらごめんなさい。トントン様の目の下をこれ以上黒くするのは……｣
と言う。それを聞いて鬱さんは少し困ったように笑って、｢せやな｣と零された。
｢……俺の事まで気遣ってくれて、Aほんま……優しすぎへん……？｣
｢トントン様の隈が酷いのは誰がどう見ても事実ですから。私が優しいのではないのですよ。……そういえばゾムさんは、あの後ちゃんとお仕事なさいました？｣
トントン様がはえ〜、と言いながら仰るのに訂正して書類仕事で思い出したゾムさんに話を振る。
｢……ちゃんと終わらして、提出した。やから怒らんでA｣
｢怒っては…ごめん、敬語だったからか、よかった、提出も……ゾムさん偉いね｣
｢んふふ｣
心配も杞憂に終わり、満更でもなさそうにゾムさんが笑う。
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
