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その声に思わず振り返るものの、先程まで声の主であろう総統様がいらした窓の向こうには既に誰もおらず、何でだろうと考える。そもそも『声』が聞こえる頻度がここで過ごしている間下がっていて、それも少しだけ気になる。
｢A？｣
ゾムさんに呼ばれて気がついて、今行くよ、と踵を返した。
･
しばらくゾムさんとイフリートと遊んでいるとそろそろ、とらんらん様がやってくる。その為、じゃあ終わりにしようかと片付けていればゾムさんはつまらなさそうにイフリートを撫で回している。
｢ゾムさん、片付けも終わったしお部屋に行こう？｣
｢そうだぞ、Aに連れて行ってもらえるんだからしっかり頑張れよ、ゾムさん｣
｢なんやねんそれ、ひとらん…………わかった、いこ。｣
多少渋ったように顔を顰めていたけれど諦めたのか立ち上がって私の手を掴んだ。｢じゃ、いこか｣とそのまま私の手を引いていくので、私は慌ててふりかえって｢らんらん様、｣と言えば
｢俺はこのまま庭の手入れしてる。済んだら庭に来てね｣
と言われた。優しい。それに私は、はいと返事をしてありがとうございますと付け加える。らんらん様はそれを見てにっこり目元を緩ませて手を振ってくださる。それに会釈して前に向き直る。ゾムさんは相変わらず少しむくれている。
つかつかと廊下を歩くゾムさん。不機嫌そうな足取りにそんなに書類仕事嫌だったかな、と少し顔を覗けば
｢Aがこっち見とる時俺にも見えてるんやからやめて、そんな目で見んで。｣
と言われるので私は慌てて少し俯く。引いていた手は離してくれている。
｢、ごめん、なさい……書類仕事、苦手？｣
｢あんま好きやない。けど、頑張る。｣
｢そっか｣
｢やから、俺とまた遊んでーな？｣
ちょうどゾムさんの部屋の前に着いたためか、ゾムさんが立ちどまる。それからくるっと振り返って｢お願い｣をされる。私はこのゾムさんのお願いに滅法弱いのだった。
｢……頑張ったらね、｣
ゾムさんの頭を数往復なでてやれば、｢ん、｣と言って彼は部屋の中に入っていった。よかった、これで少しでもトントン様のお力になれただろうか。あの人の苦労を思うと職場の上司を思い出してしまう。……大丈夫だろうか。
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月16日 18時
