【実ｼ兄者】シンデレラ・ストーリーⅡ【d!】 (ページ22)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:29,485 hit

Black monologuE ページ22

｢あんな態度とらなくったってよかったんじゃないん？｣

｢…｣

｢ほんまヤキモチ妬きなんやから。｣

｢……うるさい。｣

書類整理の気晴らしに廊下を歩いていた。向かいからふわふわと茶髪____オスマンが近寄ってくる。食堂をそそくさと出ていったことをすれ違いざまに注意された。あれは少し呆れていただろうか。

窓の外を覗けばもう夜で、そういえばさっき夕食を食べたんだったかと身体の中で満たされない何かを見つけてしまう。

そんな簡単じゃないんだ、と誰もいなくなった廊下で零す。保護対象としてそばに置いた彼女の顔を思い浮かべては溜息をついた。自分がこんなに執着していただなんて思いもよらなかった。ヴェールをまとう彼女の笑った時の声が蘇っては遠くへ消えていく。このままではダメだな、と止まっていた足を動かす。

総統執務室に戻って空気を入れ替えるために窓を開ける。夜空には大海に出た舟のような月が浮かんでいる。何時だって一人で見た月は大きくて埋められない心の奥に空いた穴を抉る。

｢……仕方ないのか。｣
だって長くこんな気持ちを隠してきたのに。

ずっと忘れないままだったのに。