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｢いや、国民がこんなことに巻き込まれるなんて本当に情けない。怖かったやろ。ごめんな。｣
そう言って私の頭をするりと撫でなさる。そのシャオロン様のお顔が優しくいらっしゃって、ふっと何かがときれる感覚がした。視界が完全にぼやけてから涙が零れているのに気がつく。
｢あぁ、ほんまごめんな、でももう大丈夫やで。今あいつくくるから。｣
｢…あ、いや、すみません、そんなつもりはございません。｣
途端に鼓動が早くなり、呼吸も整わなくなる。シャオロン様にご迷惑をおかけする訳には行かないので息を止めてぐ、と我慢する。その間にシャオロン様は気絶した男を括りあげてしまう。止めた息をふっと吐けば少し気が楽になる。涙も止まったようだ。
｢無理させてすまんかった｣
｢シャオロン様、おやめください。私は平気です。だから、お願いします、もう私には謝らないでください。｣
男を担いでやってくるシャオロン様にそうお伝えすると｢お前、優しいんやな。｣とお笑いになる。そや、と言って私の手を引いて立たせてから
｢お前、名前は？｣
と聞かれる。恐れ多くて申し上げられないと言うと
｢まーた俺にめーれーさせるつもりなん？……俺めーれーいやなんよ。｣
そう言われてしまってもう逃げられないので名乗る。
｢Aと申します。｣
｢うん、Aな。よろしく。｣
心の中でもう宜しくすることはないと思いたいのですが、と零すがこれを言えばきっと気分を悪くなさるので言わないでおく。
｢んじゃ、俺こいつが起きんうちに帰るわ｣
とおっしゃって踵を返して門へと向かわれる。
｢はい、さようなら｣
私は腰を90度に折る。シャオロン様が見えなくなるまでは頭を下げ続けた。
『あの子のこと、ちゃんと見とかな。またなんかに巻き込まれるかも分からんしな。』
遠くからシャオロン様の声でそう聞こえた。
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作者名：こゆき | 作成日時：2019年9月14日 13時
