【実ｼ兄者】シンデレラ・ストーリー【d!】 (ページ4)

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振り子時計が6時を知らせる。その柔らかい音に目を開く。今日もまた一日が始まる。

私は我々国の｢宮内庁神官部巫女課｣に所属する巫女だ。宮内庁は我々国の王族の国家事務、国事行為、王家の儀式などを司る機関で、神官部は主に王家の儀式などの手配、王族の先祖の皆様を祀っている御社の管理などを担当している。
そのうち巫女課の私は直接御社で奉仕する仕事に就いている。とはいえ東地区と言うと観光地であるので観光を兼ねて参拝にいらっしゃる参拝者の方々の対応、御社の管理、はたまたお茶屋の経営など幅広く行う。

いつもの制服である巫女服に身を包み、雑面の形をした丈の長い薄いヴェールのようなものを顔の前に垂らして顔を隠す。
王族の先祖の皆様にお顔を見せる必要は無いし、これは王族に仕えるものの独特な風習でもある。よく目立つので参拝者の方にもわかりやすい。何より、人見知りの私は視界が少し隠されることで参拝者の対応がしやすい。
生まれだけは西地区で、直ぐに東地区へ転居しただけに東地区の文化が肌に合う。

今日も御社で御奉仕に努めていた。お茶屋の帳簿付が終わって店仕舞いをした頃には随分と陽が西に傾いていて、今日もお務めは終わり、後は敷地内の見回りをして戸締りの確認をすれば帰宅だ。あともう一息と見回りを始める。御社の敷地はかなり広く、見て回るのに大体20分かかる。敷地内は大樹が聳えてさわさわと葉を鳴らしている。

初夏の足音を感じつつ御社の側から大きな門の前まで行って、そこから折り返して御社を目指して見回る。