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その時。
「ごめんね、Aちゃん。お布団剥ぐよ。」
と言う声が聞こえたかと思えば、ガバッと布団が取られる。
「〜〜〜?!」
声にならない悲鳴がでる。いや、正確には出ていないのだが。せめて視界に入れないよう固く目を瞑っていると、
「ねえ、Aちゃん。多分俺は大丈夫だから目、開けてくれない?」
と優しく声をかけられる。その声は御社の中で感じる緩やかな風のように私を包む。なぜだか安心して、だけど恐る恐る目を開くとそこには「神」と書かれた雑面をつけたまあまあ大柄な男が立っていた。
「あ、良かった。大丈夫?どこか痛いところは?」
見た目に反して彼の纏う雰囲気は春の陽だまりのような柔らかさを持っていた。この人は本当のいいひとなのだろう。自然と口が動く。
「……は、い。今は、何処も。」
声が出た。初対面の人に視界を覆うものなしに話したのは何時ぶりだろうか。クリアな視界に人がいるのがむず痒く感じる。
「そっかぁ!良かった。でも、怖かったろ?もーう大丈夫。君の事シャオちゃんが助けてくれたんだよ。」
「シャオロン、さまが、」
そうか、だからあの時シャベルが。でも、あの男全然顔見知りじゃないのに。どうして私を利用するなんて言ったんだろう。
「ねーえ、Aちゃん。」
「はい。」
「君、もしかして、人見知りだったりする?」
穏やかな声が鼓膜を揺らす。その声は、何故か私の核心をつく。
「え?」
「いや、ね。外傷は特にないのに君は気絶してしまってて。どうしたんだろうってね。ちょっと様子見てたらそうかもなって思ったんだけど。」
どうかな?と聞かれる。この人、なんでも分かってしまうんだな。もしかして、本当に神様なんじゃないか。なんて思いながら
「……そう、です。」
と答えておく。
「そっかそっか。人と目を合わせるのが苦手なんだよね?なら、雑面貸してあげるから。シャオちゃんと、喋っておいでよ。ちょっとまっててね。」
うーん、確かこの辺に、あったあった、と棚を漁って、引っ張り出した真っ白の雑面を私の手に置く。
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作者名:こゆき | 作成日時:2019年9月14日 13時