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「……A、A!!」


誰かの呼ぶ声がする。ゆっくり目に光を取り込むと、誰かがこちらを覗き込んでいた。息を吸うと香るのはアルコール臭。自分がベッドに寝かされていることは分かり、自分の部屋でもないことを理解する。ここ、どこだろう。私、そうだ変な男に絡まれて、気絶して。

そこまで思い出したところで顔を触る。ヴェールが、ない。やばい、と思い布団に潜る。多分あの声はシャオロン様だ。無理、無理無理無理。ヴェールがないのに何か喋ることは出来ない、無理だ。


「なんや、どうしたんや?!どっか痛い??」


どうしよう、どうしよう。なにも出来ない。怖くて口も動かない。どうしよう、ほんとにどうしよう。


「こーら、シャオロン。女の子怖がらせちゃ駄目だろ。」


別の声がシャオロン様に声をかける。それから、すぱん、と軽快な音がする。嘘でしょ、なんで人が増えちゃうの、なんて思うことは出来ても声が出なくて。


「ってえーー!!ペ神、叩くことないやろ!」

「何、掘られたかった?」

「イエチガイマス」


……今とてつもなく不穏な空気が流れているんですけど。頭の中は冷静なのに体は全く言うことを聞かない。お礼を言いたいのに、怖くて顔を出せない。布団の中から声を出すなんて、失礼なことが出来ない。


「シャオロン、ちょっとあっちむいてて。」


不意にペ神と呼ばれた方の声が、そう言った。


「なんで」

「いーから。デリカシーないシャオちゃんは反省してなさい。」

このペ神さんは誰だろう、と頭を回転させる。シャオロン様を呼び捨てしたりあだ名で呼んだりするってことは、偉い人って事だよな。もしかしてこれ、すごくまずい状況なのでは、とやっと思考がまともな仕事をし始める。

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作者名:こゆき | 作成日時:2019年9月14日 13時

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