検索窓
今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:602,274 hit

6 ページ20

なんかもう…、どこかに行っちゃいたいな。

1人になりたい。

とにかく、あの部屋で一人ぼっちで健永くんの帰りを待ってるだけなんて、なんか嫌なんだ。

ホテルの玄関を出たら、すぐにファミレスの看板の明かりが見えたから、そこに向かって歩き出したところで、

いきなり背後から、グイッと二の腕を掴まれた。








「どこに行くつもり。
てか、何?その荷物。」

ここにいるはずのない健永くんが立ってて、見たこともないくらいの怖い顔で私を見てる。

「…ファミレス。」

「ファミレスに行くのに、そんなに大きな鞄が必要なわけ?」

そのまま健永くんは荷物を奪い取ると、私の手を引いてホテルへ戻って行く。

エレベーターに乗っても、健永くんは繋いだ手を離してはくれない。

「健永くん、仕事なんじゃないの?」

「…仕事だよ。
でも、抜けてきた。」

「なんで?」

「藤ヶ谷さんからメールが来たから。
Aちゃんを今夜飲み会に連れて行っていい?って。」

なんで?

あの時ちゃんと断ったのに。







部屋に入ったら、

「ここ、座って。」

健永くんは威圧的に、窓際に置いてあるソファーを指差してくる。

…怒られるのかなあ。

私、そんなに悪いことしたっけ。

健永くんは私の向かいの椅子に座ると、意外に冷静な声で話をし始めた。

「藤ヶ谷さんから飲み会のメールが来て、「だめです」って送り返したら、「Aちゃん、だいぶ追い詰められてるよ」って返事が来て、心配になって会議抜けて戻って来た。
そしたら、Aちゃんがどこかに行こうとしてるから。」

「…ごめんね。」

「違うって。
ごめんって言わなきゃいけないのは俺だから。」

そう言って、健永くんは目を伏せてしまう。

「毎日毎日、1人にさせてごめん。
Aちゃんはわざわざ、仕事も辞めて知らない土地に来てくれたのに。
Aちゃんには俺しか話し相手がいないのに、毎日ろくに会話もできなくて。
本当にごめん。」

そう言って、いきなり頭を下げるから、私はなんか…、急に恥ずかしくなった。

「私もごめんね。
健永くんが仕事忙しいのもわかってるし、支えてあげなきゃいけないのに。
逃げ出そうとしてごめん。」

私も同じように頭を下げたら、

「やっぱ、逃げ出そうとしてたんじゃん。」

って、健永くんの声がいつもの優しい声に戻ったから、そーっと顔を上げてみたら、

いつもの笑顔で、私を見てる健永くんがいた。

7→←5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (796 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1818人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

あおこ(プロフ) - ああああああ永遠に続きを読み続けたい、、(yellow)ほど好きです。 (2020年4月19日 10時) (レス) id: 8d319b548e (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ちびさん» ありがとうございます(*'ω'*)何度も何度もなんて、ありがたい!!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございました。すべての完結までに時間がかかりましたが、私も書いていて楽しかったです♪ (2018年3月8日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます。返信と更新がすっかり遅くなってしまいまして!申し訳ないです(/ω\)とうとう終わってしまいましたが、mmiiooさんの満足していただける話になっていたらうれしいです(*'ω'*) (2018年3月8日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - どの回も大好きで、何度も何度も読み返してます。まだまだ、リピーターします。素敵な作品、ありがとうございました。 (2018年3月7日 22時) (レス) id: de8692953b (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - お祖母ちゃんびっくらこいたよね。気まずい!わったーは信用されてたんだろうから、さてどうする? (2018年1月28日 13時) (レス) id: 59f57126ed (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わかめ | 作成日時:2016年6月27日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。