RAINBOW

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しばらくしたら気持ちは落ち着いて、涙も止まったけど。

気持ちは、ブルーなまま。

「千賀くんと何かあった？」

藤ヶ谷さんはいつも優しいよね。

私がぽつぽつと話す言葉を、一つ一つ拾い上げるように聞きだしてくれて、

気が付いたら、今まで溜まってた不満や不安を全部、吐き出してしまっていた。







「なんか、２人ともかわいそうだね。」

一頻り話を聞いた後、藤ヶ谷さんはそう言う。

「千賀くんも今、仕事覚えなくちゃいけなくて必死なんだろうし。
Aちゃんも知らない土地に、１人でぽつんと千賀くんの帰りを待ってるっていうのもね。」

やっぱり、結婚は早かったのかな。

しばらく遠距離恋愛で経験値を増やしてから、結婚するべきだったのかも。

今更、後悔してみても仕方ないけど。

「今日さ、大学時代の友達と飲み会があるんだけど、Aちゃんも来ない？」

飲み会か…。

そういうのも、随分行ってないような気がする。

だって、名古屋に行ってからは、毎日マンションの部屋の中にいて、たまに買物で外に出るくらいで。

お友達もいないし。

…というより、あの部屋にいると、誰とも話すことがないんだよね。

健永くんしか話相手がいないのに、その健永くんも私の起きてる時間には帰って来ないし。








「千賀くんが仕事でいないんだったら、来たら。」

でも健永くん、そういうの絶対嫌がるよね。

例え大学の先輩といえども、男の人がいる飲み会に行くのとか。

「…やっぱ、やめとく。」

そう言ったら、

「Aちゃんは真面目だねー。」

って、呆れ笑いされたけど、本当は私はちっとも真面目なんかじゃない。

飲み会に行っちゃって、健永くんに嫌われるのが怖いだけの、ただの臆病者なんだよ。









藤ヶ谷さんにいろいろ聞いてもらえてすっきりはしたけど、

ホテルにチェックインして、部屋に入ったら、やっぱり一気に寂しくなる。

健永くんと初めてお泊まりした部屋と同じ間取りの部屋で。

あの夜は楽しかったし、幸せだったなー、とか思ったら。

涙がじわっと滲んでくる。

今夜もまた、遅くまで１人でこの部屋にいて、私が寝付いた頃に健永くんは帰ってくるのかな。

今日は、一緒にレストランで食事しようって話してたのに。

でも、この部屋にずっと１人でいるのが嫌で、無意識にトランクを開けてた。

自分の荷物だけを鞄に入れて、そのまま勢いで部屋を出てしまう。

どこにも、行くとこなんかないのに。

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