【赤羽業】転校生の時間・3時間目【暗殺教室】

家の時間 ページ27

「お。おかえり、A。今日のご飯は8時だって。」

「ただいま！了解でーす！」


西東京から東東京へ。そこまで遠くない道のり、電車ならすぐに家に着く。
桜井の家はごく普通のアパートだ。管理人さんに挨拶をして、自分の部屋に向かう。

でも一つだけ普通じゃないところがある。腕のいい料理人が食事を作る食堂付きなのだが、この料理が本当に本当に美味しい。ここに来るまで"良い物"をたくさん食べてきたが、それらに全く引けを取らない。

その分のお金も毎月払っているので、学校のお弁当まで作ってくれる。


同じアパートといっても赤の他人と食事をすることに抵抗のある人はいる。そういう人達は食費は払わず自分で用意して食べるようだ。
けれどほとんどの人たちは決まった時間に一緒に食堂で食事をとっている。

桜井も後者の人間だ。それもあって、近所の人との仲も良好。いい生活をさせてもらっていると思う。


「ただいま〜！」


桜井はこの年で一人暮らしである。


部屋には誰もいない。それでも挨拶は欠かさない。自分をいつでも迎え入れてくれるこの部屋への感謝みたいなものだ。


「律ちゃん、今日は7時50分になったら私に教えて。」

「了解です！」


ありがと、と言ってスマホを鞄にしまった。手元にあるとどうしても律と話してしまうから。

電気をつけ、棚にしまってある付箋の大量についた問題集を取り出す。
そろそろ期末テストだし、勉強にも本腰を入れないと。




と思っていたのだが。

普段は問題集を開いて机に向かえばすぐ集中状態になれる。でも今日はそうはいかなかった。余計な言葉が頭を巡って、目に入ってくる文字に神経を注げない。


「あーもう！やっぱやめだやめだ！」


今日は英語の聞き流しだけやる。このまま勉強したってなんの意味もない。ご飯を食べたらシャワー浴びて早く寝て早く起きよう。寝れば頭もスッキリする。

イヤホンをして椅子の背もたれに寄りかかった。
深いため息を一つついて、目を瞑る。


どうしてこんなに集中できないのかは分かってる。
莉桜に"兄弟"の話を振られて、つい色々と思い出してしまったからだ。
といっても彼女は全く悪くない。当然だろう。
何も知らないし、そもそも桜井自身が何も話していない。


ーー兄弟、ね…。


『…期待外れだよ。A。』

頭の中でリフレインする。
いつまで経っても消えてくれない言葉。



「きょうだいなんて、なりたくなかったよ。
同じ家に…生まれたくなかった。」

評価の時間�、�←実行の時間��

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す