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阿部ちゃんは事情を聞いたらすぐ帰るって言って立ち上がって。俺がぎゅーってしてたのを剥がして、彼女はお見送りに行ってしまった。
「…つまんない。」
頭が回らないから、まともな話も出来なかったけど。話し上手な彼女と、聞き上手な阿部ちゃん。2人ともすごく大人だから、こんな複雑な関係もスムーズに説明が終わっていて。それを見せつけられたような気分になってる。
…阿部ちゃんの方がお似合いなのかな。
拗ねて布団で丸くなっていたら、彼女が戻ってきた。おいで、と手招きするとなんの警戒もせずに寄ってくる彼女。
「…きゃっ！？」
「ふっ、声かぁいい。」
「いや、あの…！？」
腕を引いたら倒れこんでくる。
今度こそ剥がされないようにぎゅーっと抱きしめた。
「許可を取らない触れあいは…」
「んー、じゃあ今日だけ許して？」
「いやいや、だめです。」
「だって阿部ちゃんと随分仲良さそうだったじゃんー。
構ってもらえなくて寂しかったんですけど、俺。」
事実、阿部ちゃんと話しているときは俺の事ほったらかしだったしね！
「なんで本気でもない相手に妬くんですか。」って問いには自分のものと決めたら妬くなんてもっともらしいウソをついた。これまで気に入った子はいたけれどヤキモチなんて妬いたことなかったのに。
諦めたらしく眠りについた彼女の寝顔を撫でながら、呟く。
「…君といるとどんどん欲張りになっちゃう。」
ダメだと分かっていたのに、願わずにいられなかった昼の人間である彼女との繋がり。それが叶ってしまったら今度は彼女の心が欲しくなってしまって。
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作者名：しぅ
| 作成日時：2021年5月10日 21時
