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俺が夜の人間と分かっていても助けてくれたお人好しの彼女なら今回もあっさり頷いてくれるかと思いきや、今回は頑なに首を振る。それでも粘っていれば、返答に間があった瞬間があって。もう一押しで行けるかなって思った時。
「第一、年齢＝彼氏いない歴の私に彼女役なんて出来ません。他の人を当たって…」
「まじで！？！？
うわー、学生時代の同級生とか見る目ないねぇ…。
もったいない。」
彼女の話を遮ってしまうくらいには驚いた。
そんなことを言われたって靡くつもりは…とかぼやいているけど、そんなつもりで言ってない。これはお得意の話術じゃなくて俺の本音。
こんないい子が同級生にいたら迷わず狙いに行ってたのに…なんて続けると余計胡散臭く思われちゃいそうで。口で何言っても通じなさそうだから、最終手段。
自信なさそうに俯く彼女の顎を持ち上げて、口づけた。
「ピュアな恋人とかいいじゃん。
俺、全くそういうの気にしないしむしろそっちの方が燃える。俺の彼女になりますって言わせたい。」
「………。」
「自信持ってよ。ほんとに可愛いから。」
「……仮の関係に代わりはないので、許可を取らない触れあいしたら即切りますから。」
照れ隠しなのかつんとそっぽを向いた彼女。
お人好しが過ぎて俺のことを助けたいけど、恋人経験がないから断ろうとした…っていうのは俺の妄想なのかな。
「っていうかまさか私のこと本気にしてないですよね。」
「大丈夫。
流石に出会って1日に満たない子に本気で惚れたりしない。
でも、百戦錬磨の男としては、君みたいな子に彼女になりたいって言わせたいなって思っただけ。」
ドン引きされてるけど、それが狙いだからいいです。
本気にしちゃったなんて。
今バレたら彼女はきっと困ってしまうし、この関係を解消すると言い出すかもしれない。
女との関係を絶つ面でも困るけど、一番は君との繋がりが切れてしまうのが困る。
適当に話題を変えようとして、名前を聞いていなかったことに気が付く。
「……そうだ、名前、聞いてなかったね。
自己紹介からしよう。
俺は深澤辰哉。とあるバーでまあ夜の接待してる。」
「上村Aです。企業でOLしてます。」
自己紹介も簡単に済ませて、支度を始めた彼女。
ベッドに寝転んだまま、会社勤めの彼女を見送った。
「…免許取ろっかな。」
彼女のために取るなら車校に行くのも悪くないかも。
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作者名：しぅ
| 作成日時：2021年5月10日 21時
