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正式にカレカノになったって言っても。出会ってからはほぼ俺の部屋で一緒に過ごしていたから何かが変わるわけでもなかった。強いて言うなら、俺が夜の仕事がなくなったから一緒に寝ることが出来るようになったのと、そのせいか彼女の作る朝ごはんの匂いにつられて起きることが出来るようになったくらい。



今日もお勤めに出る彼女を見送ってから、自分も支度を家を出た。行先は、働いていたバー。もう、今日以降訪れるつもりはない。



「あ、来た来た。」


「お待たせ、阿部ちゃん。」



考えがあると言った阿部ちゃんと、今後について相談。



「…阿部ちゃんも気づいてたけど、彼女を傷つけないためにも俺はここを辞める。でも、就職できるほどのスキルを自分が持っているとも思えないしっていうのが今の悩み。」


「って言うと思ってさ。起業したらどうかなーっていうのが俺の考えてたこと。別に会社を立ち上げなくても、カフェとかさ。色々資格とかは取らないといけないかもしれないけど、そこは俺たちも協力できることするから。」



ふっかは昔からなんでも一人で解決しようとしすぎなんだと笑われた。俺としてはそんなつもりも特にないんだけど…。強がりなところがあることは自覚してる。



「翔太なんて舘さんいないとやってけないくらい頼りっぱなしじゃん。同じくらい頼ってくれていいんだよ。腐れ縁だったとしても、ここまで一緒に来れた仲なんだからさ。」


「…わかった。
ちょっとこのこと、岩本さんにも相談してみる。」


「うん。いいと思う。
こういう時に一番頼れるのは間違いなく照だからね。」



結論が出たところで、バーを出る前に店長に呼び止められた。



「いつでも遊びに来ていいぞ。
今度はその彼女さん連れてきてくれても…。」


「彼女をこんな世界に連れてきたくないから仕事辞める人になんてこと言うんですか…。でも、そうですね。もう少し、俺の身の回りも落ち着いたら顔出します。」



仮にも10年ほど働いていた職場だから思い入れはあるわけで。店を出た後少し泣きそうになった。






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作者名:しぅ | 作成日時:2021年5月10日 21時

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