お隣さんのお隣さん【紫】another story (ページ2)

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結局自炊は覚えないまま数年、1人暮らしを続けていて迎えた何回目かの春のこと。大型連休も明けて、世間が通常に戻る頃に事件は起こった。

いつもの通り出勤して、一番のお得意さんである子と飲んでいたら体に違和感。そのうち立っていることがやっとになってきて、気付いた。薬を盛られたのだと。

タイミングがあるとすれば、女から酔い直しに受け取った水の中だろうか。

とにかくこの女は早く切った方がいいと阿部ちゃんとも確認したうえで、送ってこうとしてくれた阿部ちゃんと佐久間の申し出を断って1人帰路に着いた。こんなに弱ってる姿を2人に晒すのも嫌だった。

強がってみても、ダメなものはダメで。
道端でしゃがみこんでしまったところで聞こえたヒールの音。
段々、近づいてくる。

「大丈夫ですか！？」

「だい、じょぶ…。
いえ、このちかく、だから…。」

「送りますよ。
歩けそうですか？」

大丈夫だと断ったのに、女の子は俺を支えて立ち上がらせて。ふらふらとアパートまで辿り着くと目を丸くしている。

「…このアパート、ですか？」

「うん…。ごめんね、もう大丈夫だから。」

あとはなんとか自力で帰れるだろうと判断して、断った。帰っても寝るだけだし。

なのにその子は

「私、2つ隣の部屋に住んでいるんです。
すぐに夕食作るので上がっていってください。」

そう言ってまだ力の入らない俺を強引に引っ張った。

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