ネコチャン、遊びましょ (ページ1)

今日:3 hit、昨日:8 hit、合計:3,925 hit

セラピーページ1

『うぁ...ちょこちゃあぁ...』

Aは限界化していた。

返された中間試験は凡ミスで目標点に届いておらず、レポートは提出期限をすっかり忘れてた。理科の実験ではミスしてガラス用具を割るし、体育では思いっきりコケて膝を擦りむいた。

その他諸々細かいこともあるが、とにかく今日はよくない。
朝の星座占いは4位だったのになんだこれ。

たまに犬耳が見えると定評のあるAだが、今は見えたとしても限界までぺっしょり垂れているのではなかろうか。

半分定位置になりつつある壁際に座り込み、足元に歩いてきたチョコちゃん、いやレオナに手を伸ばした。

『抱っこ...ダメ？』

「......にゃ」

『やっぱダメかー。』

プライドを総動員させてそっぽを向いてやったというのに、Aはへらりと顔を緩ませて体を撫でだした。

「(いやそっちの許可も得ようとしろよ)」

心の叫びは勿論届くことはなく...
せめてもの意思表示に顔を更に背けても、所詮は猫だ。効果なんてたかが知れているというもの。

優しくふわふわに緩んだ顔を視界の端に捉えるたび、心臓が今までに感じたことのない軋み方をする。
困る。とても困るが...それが心地よくもある。

レオナはこの瞳に滅法弱かった。

喉を鳴らす猫を撫でる手元を、Aはぼーっと見ていた。

相変わらずの毛並みに、相変わらずの顔面偏差値。
可愛いし大好きだし癒されているのだが、それはそうと限界化が半端ない。

『...あのね、チョコちゃん。私最近ダメダメみたい。』

前置きしてから、今日の出来事をぽつぽつと呟いていく。
中には愚痴も混じっているものの、殆ど自身の失敗談だった。

不運なものから自分のミスによるもの、相手のミスによるものと話が多岐に渡っていくのと共に、次第にAの表情も歪んでいく。

そして、ふと手が止まった。

不思議そうな、でも少しムッとしたようなレオナがもっと撫でろとでも言うように閉じていた瞼を持ち上げる。
その鼻先に、ぽたりと水滴が落ちた。