甘々苺と恋しません？ (ページ12)

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★手　　ななもり。くんページ12

- 少しがもどかしい -

「最近、本当寒いよねー。

　手が悴むよ」

『本当にねー、手袋つけてくればよかった』

　十二月の中旬。

　コートや手袋を付けないと、本当に寒い時期。
　
　ニュースでは今日が一番の冷え込みだって言っていた。

　そんな日に、彼氏のなーくんとデート。

　外ではあまり手を繋がない私たち。

　なーくん曰く、

「転んだり、躓いたりしたら危ないじゃん！」

　らしい。

『(私、そんなドジじゃないですけど、)』

　心の中で少し文句を言いながら、目線少し下に下げる。

　なーくんの手と私の手は、どちらかが手を伸ばせば触れるくらいに近い約十センチの距離。

　でも、

　その数センチがもどかしい。

『(手、繋ぎたいな)』

　なんて言っても、困らせてしまうだけだろう。

　足止めをくらっていた信号が青に変わると同時に、周りが動き出す。

　私たちも波に任せて歩き出す。

『あ、』

　その途端、私たちの間をガタイのいい男の人が通って行った。

　引き離される、なーくんと私。

「ももか、！」

　少し先からなーくんが手を伸ばしているのが見えた。

　迷わず、私は、握った。

「っと、大丈夫？

　怪我ない？」

　細い体からは信じられないほどの力で、引っ張ってくれたなーくん。

　質問に大丈夫だよ、と答えると良かったと優しく微笑んでくれた。

『(あ、手。離れちゃうかな…)』

　私から離したほうがいいのかな、そんなことを思って力を緩めると、彼はそれ以上の力で握り返し

てきた。

『え？』

「ん？どうしたの？」

　人混みの中を力強く引っ張ってくれる頼もしい背中にそう問いかけると、頬を少し赤くした彼が振

り返った。

「……寒いから、ダメ？」

　そう言って、彼のコートのポケットに繋いだままの手を入れられた。

『…私も、寒かったの、』

　ポケットの中で緩んだ手を握り返した。

　少し先を歩く彼の顔が、寒さのせいで赤くなっているわけではないと知るのはもう少し先。

　 fin.