74. ページ37
*
マイキーが仲間を殺した。その事実が受け止めきれないのは何も武道だけじゃない。Aだって、最初は「マイキーが殺す訳ない」そう思った。だけど、彼女は12の頃から裏の社会を見てきた。いくら大好きなマイキーといえど、彼もまた裏に染まった人間。"あの頃"はもう無いのだと理解するのに時間はかからなかった。
「Aちゃんは、どうしてそんなに平然としてられるの?」
「慣れじゃない?直人君から聞いたならさ、私が12歳から裏社会の仲間入りをしたのも知ってるんでないの?」
「うん。ハルちゃんと別れて1人裏社会に入ったって。ハルちゃんが、その、亡くなった事も。」
空港へ向かう車の中で後部座席に座ったAと武道の会話はとても穏やかじゃない。Aの腕前でマイキーの居場所は事前に知っていた。加えて武道の元に届いた手紙にも居場所があって決定的となった。
彼らは今、マイキーに会いにフィリピンに向かっている。マイキーの口から真相を聞くために。
「直人からAちゃんが情報屋やってるって聞いた時さ、その、すっげぇ驚いたんだ。だって、俺の知ってるAちゃんは赤いランドセルを背負った女の子なんだぜ?そんな子が裏の仕事してるって……Aちゃんも、変わっちまったのかと思った。」
「でも、」とAに向けた武道の顔は12年前と何一つ変わらない目をしていた。そのまま時を超えたかのような顔を。いや、実際超えてきているのだが。
「Aちゃんはあの頃のままだ。優しい女の子だ。ハルちゃんを1人施設に預けたのだって、妹に裏の仕事をさせない為でしょ?妹思いのお姉ちゃんのまま。ぶっ飛んだ事を成し遂げちゃう、いつも周りを驚かせるおてんば娘。あのマイキー君やドラケン君が手を焼くくらいの女の子。」
「未来で情報屋なんてやってるんだもん。本当に君はいつも周りを驚かせる」なんて自分にもブーメランな事を言っている武道から逃げるように窓の外を眺めた。
これ以上、武道の顔を見ていたら泣き出してしまいそうだった。「Aちゃん」と12年前の様な声で自分の名前が呼ばれた。
「質問していいかな?」
「どーぞ。」
「君も、タイムリーパーなの?」
武道のそれに思わず素っ頓狂な声が出る。釣られて直人も驚いた顔をした。
858人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あう(プロフ) - shiochanさん» ありがとうございます!拙すぎる文章ですが、これからもどうぞよろしくお願いします(土下座)私自身がハピエン厨、ハピエン大好きマンですので笑この先も楽しく読んでいただけるよう頑張ります! (2021年9月5日 21時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
shiochan(プロフ) - 面白さもあって楽しく読ませて頂いてます。ハッピーエンドと書いてあったので、嬉しいです(^^) 応援してます。頑張って下さい^_^ (2021年9月5日 20時) (レス) id: 51856805e1 (このIDを非表示/違反報告)
あう(プロフ) - あーゆーさん» リクエストありがとうございました! (2021年8月22日 22時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
あーゆー - ひんと→ほんと です。嬉しすぎて誤字になってしまいました…。すみません。 (2021年8月22日 19時) (レス) id: f98a04dc60 (このIDを非表示/違反報告)
あーゆー - ひんとですか!? めちゃくちゃに嬉しいです! 有難うございます! (2021年8月22日 17時) (レス) id: f98a04dc60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あう | 作成日時:2021年8月5日 13時