【d.!】Let it dry!【合作短編集】 (ページ22)

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「いつもありがとね」
「何が？」
「いや、毎日髪やってもらってるから」

正直面倒だからすごい助かる！と、けらけら笑いながら言うAの顔が見たくて、後ろ髪を引かれつつうなじから顔を上げる。そして、彼女を抱き上げ、俺の膝の上に跨るように座らせた。羽のように軽い。

「私このままだと1人で髪も乾かせなくなっちゃいそう」

ふふ、と笑って甘えたような声音でそう言うAに肯定とも否定とも取れないような返事をする。きっと俺は今曖昧な表情を浮かべていることだろう。

不思議そうな顔をして大きな瞳をぱちくりとしているAの色白で滑らかな頬を両手で包み込む。

キスをされるのかと思って目を閉じた彼女に少しだけ笑って、ツンととがった可愛らしい鼻先にそっと齧りついた。

ああ、このままAが俺なしじゃ何もできないようになってしまえばいいのになぁ。

まずは1人で髪が乾かせなくなって、俺なしじゃ髪も洗えんようになって、それから俺がいないと風呂に入れなくなる。

次は着替えやろか。1人で服のボタンがつけ外しできなくなって、最後には俺がやってあげないと着替えすらままならなくなれば良い。

化粧とかスキンケアは…ちょっと難しいけど、やらしてって頼めばたぶんやり方を教えてくれるし、そしたら練習させてもらって極めればいい。
最近ではAの指先を彩っているポリッシュもそんな感じで俺がやってるし。

それから食事か。料理が苦手な彼女のために、普段から作っているのは俺だ。味見と称して手ずから食べさせるのは日常茶飯事。回数を増やせばいい。いつか、1日3回の食事も全て俺の手から食べるようになってほしいものだ。

最後は移動。まあ、これは難しいか。俺が抱っこしないとどこにも行けないようになればいいのに。そうなったAはきっと、愚かな好奇心で地上に降りてしまい羽をもがれた天使みたいに可愛いだろう。今だって十分可愛いけど。

決して誰にも聞かせられないような願望について思案しながら、今度こそ俺だけの可愛い天使の赤く瑞々しい唇に口づけた。

明日からはシャンプーも俺がやってあげような。