隠した想い【ヒロアカ】 (ページ23)

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20話：殺人鬼の覚悟ページ23

今まで後ずさっていたイナトの背中が、壁に当たる。…その瞬間、イナトが悪足掻きの様に言った。

イナト「…！ひひ！こうなったら…！」

貴方(何をするつもりだ…？)

イナトはすぐ後ろにあった棚の蝋燭(ろうそく)を壁に叩きつけ、それに向かってアルコールの便の液体を叩きつけた。

油が飛び散り、すぐさま引火する。
そして瞬く間に火がAらの辺りに広がる。

イナト「ヒハハハ！これでこの家にある証拠も燃えて無くなる！俺の勝ちだ！」

そう高笑いするイナトの腕にAはナイフで浅く、けれども深く傷を付ける。その傷でイナトの動きは止まった。

貴方『…あぁ、ったく…。おっさんさぁ…。凄く面倒な事してくれたな…？…手短に行くか』

瞬間。先程イナトに付けた傷と同じ場所をもう一度切り付ける。そして先程とは違う、ドスの掛かった脅しの様な声でAは言った。

貴方『オイ、クソジジイ。答えろ。お前の目的はなんだ。さもなきゃ今度は腕ごと切るぞ』

イナト「うわぁッ！ま、待ってくれ！降参する！だから早く辞めてくれ！」

そう命乞いをするイナトの腹を蹴り、更に深く同じ場所を切ったAは鋭くイナトを睨み付けて言った。

貴方『降参する、しないの話は聞いてない。私は今お前の目的を聞いてるんだ。答えろ。なるべく早くな。…その事情によっては見逃してやるからよ』

イナトは苦痛と恐怖に歪め涙を流しながらも声高に叫ぶ。その無様な姿にAは呆れた様な顔をする。

イナト「目的は…金と、権力！俺が拉致していたのは、誰もが金持ちの人間だ！

その罪を何も知らない部下に擦り付けて、俺が暴いた様にしてやったんだ！

おかげで俺は今、もの凄い権利者だ！…どうだ！これで満足か!?」

黙って自身を睨んでいるAにイナトは涙声で己の所業を暴露する。

貴方『…で？あの部屋にあった死人や怪我人はお前が拉致したのかよ？』

イナト「そうだ！俺はアイツらに暴行を加えて金を巻き上げるつもりだった！」

それを聞いたAは目を伏せて、自身の手にあるナイフを見てまた狂気的な笑みを浮かべて言った。

貴方『これで終わりだ。クソジジイ』

イナト「はぁッ!?何でだ！今、見逃すと…！」

ナイフを首元に振り上げようとしたAにイナトがすがりつく。それをやれやれとAが言う。

貴方『人の話聞いてたか？事情によっては。必ず見逃すとは言ってない。

更にお前は完全な悪党だ。だから私が裁く。…じゃあな。議員さん？』

瞬間。Aはイナトの喉元を切り裂く。そして、イナトは息絶えた。