水色付箋 (ページ5)

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六限が終わって、掃除の時間

今週私は廊下の担当で、掃除道具入れから箒を取り出してゴミを集めていく

早く帰りたいなーなんて思いながら、淡々と流れ作業を行っている私の視界に、人影

「 ……あの」

顔を上げて、思わずドキッとした

人影の正体は、ながのくんで

その手には、私が貸した古典の教科書

「これ、ありがとうございました」

「あ、いえいえ、」

箒を持ってない方の手で、差し出されたそれを受け取る

なんか、なんとなく空人が返しに来るもんだと思ってたから、びっくりしちゃった

「あ、メガネ」

「え？」

「え、あ」

やば、さっきの時間見てたから、つい

本人に言うつもりはなかったのに、口から出てしまった

「や、えっと、メガネしてないなって思って」

「六限、体育だったから」

「そう、なんですね」

「うん」

敬語だったり敬語じゃなかったり、ぎこちない会話

ゆったんとなごが女子とあんま話さないって言ってたし、やっぱ苦手なんだろうな

「じゃあ、俺はこれで」

「あ、うん」

ほんと、ありがとうございました、って律儀すぎるぐらいお礼を言って去ろうとするながのくんとは、最後まで目が合わなくて

自分でも理由はよく分からないけど

気づいたら、ねぇ、ってその背中に声をかけていた

「眼鏡、掛けてるのも似合ってるけど。掛けてない方が、いいと思う」

その整った顔立ちが、よく見えるから

なんて言葉は、口から出る前に飲み込んだ

( 私は何を、ほぼ初対面の人に言ってるんだ…？ )

ハッとして、ごめん変なこと言った！って口にして改めてながのくんを見ると

くりっとした瞳を大きく見開いて私を見ていて、やっと、視線が重なる

「 ……え、っと。ありがとう…？」

困惑した様子のまま、返してくれた言葉

そっぽを向いて少し恥ずかしそうに耳の後ろをかく、そんな仕草に

なぜか胸が、きゅんって鳴った

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