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「今日は東京に泊まるの?」


「いえ、これから電車に乗って帰るところです」


「そっか…君のお家も相変わらずだねぇ、観光くらいさせてあげればいいのに」



頭の後ろで手を組んで、五条さんは呆れたように言った。それに対し私は、"任務ですから"と決まったように返すのだ。



「あれ、送迎は呼ばないの?」


「補助監督の方に申し訳ないので、丁重にお断りさせて頂きました。駅までは歩いてでも行けますから」



忙しいのに時間を割いてもらうのも申し訳ないと思い、それではまた、と切り出して駅に向かうため歩みを進める。ところが、僕も一緒に行くよ、という一言と共に五条さんが隣で歩き始めた。




「ですが…」


「いいの。僕がそうしたいんだから。それに女の子1人で帰すわけにはいかないでしょ?」



女の子、という言葉が未だに慣れない。禪院家では男尊女卑が当たり前。こんな風に優しく接してもらえる機会なんて、家にいる間は絶対に有り得ないのだ。


だからこそ、五条さんと一緒に過ごす時間は甘い甘いご褒美のように感じる。ふわふわとした心地がする、なんとも素敵な時間だ。





「それでは、お言葉に甘えて」



私がそう言った後、五条さんは満足したように微笑んだ。目隠しをしていても表情が読み取れる。



駅までの道のりを、たわいもない話をして歩いていく。世間話や任務先での出来事、最近行きつけの甘味処の話など。

私が口下手ということもあって、ほとんどが五条さんの会話で満たされている形ではあるけれど。それでも、彼との会話はとても心地が良かった。






楽しい時間はあっという間で。道の先に、夕陽に照らされてオレンジ色に光る駅が見えた。




「それでは、ここで失礼します。とても楽しいひと時でした」


またお会いできる日を楽しみにしています、と言って踵を返そうとするが、五条さんに投げかけられた言葉に足を止めた。





「Aはさ、どうして呪術師になろうと思ったの?」




突然の言葉だったが、素朴な質問だとは思えなかった。本心を引きずり出される感覚がし、その言葉が深く刺さる。




私が、呪術師になった理由は_____







「…呪術師(それ)でしか、存在意義を見出せなかったから、ですかね」






人々を呪いから守るためでも、呪術界を支えるためでもない。



私が呪術師を志した理由。それは、私が生まれてきたことを、生きることを許される唯一の手段だったから。

・→←最強の呪術師



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アキ(プロフ) - えもう最高すぎます……。続き楽しみにしてます😭💕💕 (2022年10月1日 10時) (レス) @page24 id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 最高です❗️ こうゆうのを待ってました‼️ (2022年8月11日 12時) (レス) id: 6c9eae5177 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - うわああめっちゃすきですこれ!!!更新止まってるみたいなのでよければ再開してほしいです(T_T) (2022年7月23日 18時) (レス) @page24 id: 44246302dc (このIDを非表示/違反報告)
ベリーショート(プロフ) - ミリカんさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2022年4月23日 16時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
ミリカん - 最高に面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2022年3月22日 3時) (レス) id: 17b40665d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ベリーショート | 作成日時:2022年1月5日 23時

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