死にたいヴァンパイアの生きる意味

28話 ページ29

フラン「･･･高杉、晋助･･･?」

　将軍様がお祭りに参加されるということで、その護衛をすることになった真選組･･･間違いなく攘夷浪士も動くだろう、という話なのだが･･･それに加え、攘夷浪士の中で最も危険で最も過激な男が、江戸に来ているという噂があるらしい。

土方「･･･ああ･･･お前は知らないのか･･･」

　高杉さんというのは、左目に包帯を巻いた、濃い紫色の髪をした男らしい。･･･土方さんに写真を見せてもらったけど、光のない目から伝わってくるとてつもない憎悪･･･でも、どことなく悲しそう･･･

土方「こいつァこの間の攘夷浪士とは全くの別物･･･10年前、攘夷戦争で活躍した、攘夷四天王の一人だからな」

　10年前、か･･･幕府率いる天人と、攘夷浪士の対決･･･なるほど、じゃああれは、そのための物資と、領土を確保するための･･･いや、そんなことはどうでもいい、か･･･

フラン「･･･とりあえず、相手が誰であろうと将軍様を護る･･･それでいいんだよね?」

　その高杉さんの実力がどれぐらいなのかは知らないけど･･･土方さんの口ぶりからして相当な手練れであることは明白･･･吸血鬼である私にとって脅威となるほどかはわからないけど、強い人って殺さずに戦闘不能にするのが大変なのよね･･･加減をしすぎればこっちがやられるし、かといって本気を出せば殺しちゃうし･･･

土方「ああ、それから高杉が率いる鬼兵隊っつう義勇軍があるんだが･･･そこにいる連中も結構な手練れでな･･･中でも厄介なのが、名前、年齢、出身･･･謎に包まれた、鬼兵隊最強を謳われる高杉の側近の女･･･出会った瞬間に命を刈り取る様から悪魔とも呼ばれたが･･･気にくわなかったのか、本人が別の名を名乗ったため今はこう呼ばれている･･･ツェペシュの幼き末裔、とな･･･」

　ツェペシュ･･･ヴラド･ツェペシュ･･･?･･･8万人もの人間を串刺しにして命を奪ったことから串刺し公(ツェペシュ)の名を持つ15世紀のルーマニアの国王･･･その姿から、彼はドラキュラ伯爵のモデルと呼ばれることとなった･･･まあ本来の吸血鬼である私からしたら所詮は人間という認識だけど･･･その末裔を名乗るなんて、まるで吸血鬼を名乗っているかのよう･･･

フラン「･･･まさかね･･･」

　頭に浮かんできた紅い月を消すように、私はゆっくりと目を閉じた。

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