あの頃はそれがこの世界の全てで【高尾和成】

Good Old Days 022 ページ35

　早速試してみようとしたが、小堀さんが「大惨事が予想出来るからマジバを出よう」と提案(忠告)してくれたので、無人だった公園に移動した。


　幸いにも、真太郎がウィッグを持っていたので、それを借りて森山さんに被ってもらった。うわ、流石森山さん。完璧な美人さんだよ。


「どうだ笠松！ もう女の子も怖くないだろう！ さあ、レッツ合コ」


「ムカつくだけだわ森山ァ！」


　あれ、失敗だったみたい。森山さんは、笠松さんに蹴られた臀部をさすりながら、「オレの美尻が……4つに割れちゃう」と言っていた。うわ、流石森山さん(残念な方の意味で)。


　私は、吹っ飛んでいったウィッグを拾いながらキセリョに言った。


「どうする？ 女装でも駄目だったけど」


「今回のは配役に問題があった気がするっス……」


「えーじゃあ次は早川さん？ それともキセリョ出陣する？」


「遠慮しとくっス」


　もう仕方ないんじゃないかな、苦手なんだったら。無理強いすることないよ。


　そう言うと、さっきまでダウンしていた森山さんがガバッと顔をあげた。でも残念だけどもう多分テンカウント以上経ってる。


「女子が苦手なままじゃ駄目なんだ！ 笠松のためにも。だってAちゃんも見ただろ、さっきマジバにいた時、女性店員さんにどもりまくってロクに注文出来てなかっただろ！」


　そう、笠松さんはダブルチーズバーガーセットを注文しようとしたが、つっかえたせいでなぜか期間限定☆春風香る桜のふわふわぱふぇが運ばれて来たのだ。


　もう夏休みも終わりそうなのに春風香る桜が期間限定になっているマジバの事情を垣間見た。そこんとこ、お口チャックだよ。


　確かに1人で注文出来ないのはツライと思うよ。でも、森山さんその時爆笑して写メ撮りまくってたじゃん。


　なんて先輩(ましてや他校生)に言える度胸はない。口をつぐんでいた私の心内を知ってか知らずか、和成は「いや森山サン爆笑してませんでした？」と平然と言った。


　なんてヤツだ、彼は将来大物になる。


「こうなったらモノホンの女子のAっちが行くしかないっスよ！ 多少の荒療治は厭わないから、ホラホラ！」


　キセリョに押されて、私は笠松さんの前に出た。


　えっ絶対無理無理無理、私がトラウマとか植え付けちゃったらどうすんの、誰か助けろやの意を込めた眼差しで笠松さんを除いた男性陣を見る。


　

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