Good Old Days 027 ページ40
「仕方がないですよね、苦手なモンは苦手ですよ」
「は? あ、おう」
ベンチにドカッと座った私を、ビクつきながら見る笠松さん。
「誰にも話したことないんですけど、白状します。私ね、タスマニアデビルと見つめ合うことがほんっっっとうに出来ないんですよね。ずっと克服しようと思ってるんですけど」
笠松さんは、呆気にとられているようだ。お口がポカンと開かれていて、彼が発した“は?”は、先程よりも困惑の色が濃い。
「ちっちゃい頃、3軒隣の田中さん家がタスマニアデビル飼ってまして。田中さんには私と同じ年頃の息子がいたので、私はよくその家に行きました。
そう……あの日も、私は田中家へ遊びに行っていました。でも特にすることがなかったんでタスマニアデビルのター君とガンの飛ばし合いしてました」
意味分からん、という目で見られる。
「マジ何やってんだよお前」
「まあ、それで睨み合い開始から14分が経った頃」
長期戦かよ、と小声でツッコむ笠松さん。
「ター君が……ウインクしたんですよ。それがもうゴロゴロのたうち回るくらい可愛くて」
「お、おう落ち着けお前?」
笠松さんは、ター君のウインクを思い出して身悶えする私に若干引き気味。若干だからね、大分じゃないからね。
「で、あまりの可愛さに身をよじらせてたらタンスの角に足の赤ちゃん指ぶつけて別の意味でのたうち回りましたよね」
それからはマジでタスマニアデビルと目合わせられないんです、と昔ばなしを締めくくる。
「つーかその場合、タスマニアデビルよりもタンス恐怖症になるんじゃねーの?」
「いや別にタンスに罪ないですし」
「ター君にも罪ねえよ」
イヤイヤイヤ、可愛すぎるって罪でしょ。
「あー、てか、ありがとな、お前」
笠松さんが、後頭部をガリガリ掻きながら言った。一体全体何に対しての感謝なのか分からない。
「その話、お前ヒトに知られたくなかったんじゃねーの? オレが女子苦手だから、わざわざ話してくれたんだろ」
私は目を丸くした。まさか、笠松さんがそこまで気が回る人だと思っていなかったのだ。
「別に良いです。それより、“お前”ってやめてくれません? 日田Aって、私の名前知ってます?」
私がそう言うと笠松さんは笑って、私の頭をクシャッと撫でた。
「生意気だわ、日田」
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ふなふね - 猫さん» コメント感謝です! 思い入れ結構あるので歓喜しております。 (2022年4月24日 17時) (レス) id: 350748c4de (このIDを非表示/違反報告)
猫 - 私もっと高尾君が好きになりました。 私この作品大好きです!続きが楽しみです! (2022年4月17日 16時) (レス) @page47 id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - すみません!友達になろうのコメントいとこがわざと書いたんです!なのできにしないでください!・・・でもこれからもわたしのさくひんよんでくださるとこうえいです! (2022年4月17日 9時) (レス) id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
ふなふね - 猫さん» ありがとうございます! とっっっっっっっても励みになります。ぜひコメントさせていただきますね。 (2022年4月16日 14時) (レス) id: 350748c4de (このIDを非表示/違反報告)
猫 - とても面白いです!・・・どうしたらここまで面白くなるの!?・・・・アドバイスがほしいのでできたらでいいのですが、私の作品「ダシャレが私たちの運命を」のコメントコーナで教えてください!(ちなみに多分、占いツクール 黒子のバスケででで来ると思います!) (2022年4月16日 13時) (レス) @page10 id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふなふね | 作成日時:2021年9月29日 19時