閉鎖的な世界から愛を叫ぶ

Ki side ページ17

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同性愛についての歌を歌う意味がない






それが今回の仕事を拒んだ本当の理由だとはとても思えなかった。



もちろんそれもあるのかもしれない。



でも俺は、太輔がそんな漠然とした理由で仕事を選ぶわけないって思ってる。



だって、パクチー891本企画のときだって、あんなにパクチー苦手なのに仕事を断ることもなくちゃんと最後までこなしたんだよ？(多少奇声は発したけど)



そんなの当たり前のことじゃない？って思うかもしれない。


そうだよ、当たり前だよ。

だって仕事なんだから。


パクチー苦手だからこの仕事やりませんなんて普通はならない。



じゃあこの曲を歌う意味が分からないからやりません、っていうのは？


これだって、普通はこうはならないでしょ？




何より、人一倍仕事に熱心で誰よりも仕事を大切に思ってる太輔が、意味がないからやりたくない、なんて。そんなこと絶対に言わないって俺は思う。








でも結局、本当のことは太輔にしか分からなくて


俺がいくら考えてみたって分かるはずないんだけどね。





本当は本心を知りたかったけど、あんまり問い詰めても逆効果だし


言ってくれただけでも大きな進歩だから。





今回は良しとします。









仕事を変えることは出来ない。



それに、せっかく俺たち二人の歌をまた聴きたいって言ってくれたんだ。



やるからには、最高の曲を皆に届けたいじゃん。




だから俺は、俺に出来ることをやるよ。









「ねぇ、太輔」



「…………っ、ごめ…っ……ごめ、なさ、っ」



「俺も、太輔と同じ気持ちだよ」



「…………え、」






俺の言葉が意外だったのか、涙に濡れたビー玉のような瞳を零れてしまいそうなほど大きく見開く太輔。


たったそれだけのことで俺の心はたちまち可愛いという感情によって埋め尽くされてしまう。



ほんと、これでよく一旦離れようとか言ったな俺。







「ファンの皆がいるから俺らがいる。」


「…っ、」


「だから、ファンの皆に寄り添う歌を届けたい、そうでしょ？」


「……うん、っ」




「ふふ……………でもさ、」


「？」


「そろそろ、俺らのための歌を歌ってみてもいいんじゃないかな」






俺たちは今までファンの皆のために歌を歌ってきた。



そろそろ俺たちの、俺たちのような同性を愛する人たちのための歌を歌ってみてもバチは当たらないんじゃないかと思うんだ。

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