閉鎖的な世界から愛を叫ぶ

Ki side ページ16

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「……………っ、……グスッ…」





太輔の頬を伝い始めた涙をみて、少しホッとした。


俺の前で泣けるならまだ大丈夫。




俺の前ではやっぱり、素の太輔でいてほしいしね。









「ふは、まだ泣いてる」


「っ、…ぅ……だって、ひろが……いいって、言った……」



「…ふふ、そうだな……嫌なことぜーんぶ忘れるくらいたくさん泣こうな？」



「グスッ…………うん、っ…」



「んふふ、……よしよし」






たくさん泣いて気が抜けたのか


少し幼い甘えたような喋り方になった太輔がたまらなく可愛くて


俺の頬は緩みっぱなしだった。









「あ、海だ。太輔、海だよ」


「わ、ほんとだ」





目的もなくただ車を走らせていたら、いつの間にか海の近くまで来ていたらしい。



今はもう海に入るような季節ではないけど、
日の光を浴びてキラキラと輝く海はいつ見ても綺麗だ。








「ねぇ、窓開けてもいい？」


「あぁ、いいよ」


「………気持ちいいね」


「…そうだな。太輔、海大好きだもんな」


「うん、……すき、だいすき。」






窓を開けると潮の香りを含んだ風が入り込んできて、それがすごく心地よかった。









「俺ね、ほんとはやだよ。やりたくない」






不意に太輔がそう呟いた。


二人だけの空間に、その声はよく響いた。




俺は何も言わず、ただ太輔の言葉に耳を傾けた。







コイツの本心を



滅多に語られることのないコイツの本音を



一言だって聴き逃したくないから。









「俺ね、聴く人の……


ファンの皆の心に寄り添う、そんな歌を届けたいって思ってるんだ。




例えばね、今日はなんか悲しい気分だからタナゴコロ聴こうかな、とか


ちょっと泣きたい気分だからSmile聴いてみようかな、って


そんな風にファンの子たちが


キスマイのこの歌、今の気持ちにぴったり！とか


この歌詞すごく共感できる！とか思ってくれてたらすごく嬉しいなぁって




ファンの皆とそんなにたくさん会えるわけじゃないし


だからこそ俺たちの歌で寄り添うことが出来たら


俺たちを近くに感じてもらうことが出来たら



それってすごく素敵なことだなって思うんだ








だからね、………その、……


俺たちが、同性愛についての歌を歌うって、


なんか意味あるのかなぁって思っちゃうんだ」

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