初めまして 二十四項目 ページ30
「一期さんは...椿さんのことが好きなんですか?」
「...へ?」
隣通し肩を並べて棚の中に陳列されている衣服を手に取っている一期さんに、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
彼はすっとんきょうな声を上げて首を傾げたが、やっと僕の言葉の意味が分かったらしい。今度は分かりやすいほどに頬を紅く染めた。
「え、あ...え?」
「いや。ここに来る際、ずっと彼女の方を見てたので...その、気になっちゃって」
まさぐっていた手を止めてわなわなと震え出す一期さんに、僕は畳み掛けるかのような言葉を口にする。とうとう彼は両手で顔を覆ってしまった。耳まで真っ赤である。
「...そんなに、分かりやすかったですか?」
「あはは...はい」
「うわぁ...」
指の隙間から此方を覗く一期さんに、僕は一つ頷いた。すると彼は軽く悲鳴を上げながら、遂にはしゃがみこんでしまう。最早可哀想なくらいに赤くなっている彼に、僕の頬も吊られて赤くなっていくような気がした。
初めて出会ったその時から、彼は生真面目で優しい好青年という印象だったので、こうして熟した林檎のようになっているのは少しだけ拍子抜けした感もあったのだ。
「あの...告白、とかしないんですか?」
人の恋路に直に触れたために自然とニヤついている僕は、随分とド直球なことを聞いてみた。
すると一期さんは今までの初々しい反応から一変、少しだけ悲しそうに微笑む。
「...私には、その資格がありません。それに、あの方には既に相手がいますから...」
「相手...?」
何処か儚げなその様子に、僕はそれ以上何も聞けなかった。
・
何着か服を見繕ったあと、僕たちは各自で買った飲み物を片手に壁に凭れて休憩していた。そんな僕らの耳に、聞いたことのある声が入ってくる。声のする方に視線をやると、やはりそこには太宰さんたちの姿があった。
「太宰さん、谷崎さん...って、え?鶴丸...さん?」
「...知らない方ですな」
一期さんが冷たい視線を向けるのも無理はない。
鶴丸さんは白い戦闘装束から一変、COOLと型どられた黄緑色のサングラスにキラキラのラメが散りばめられたパーティー用の羽織...如何にも元の格好より目立っているであろう服装に、太宰さんも谷崎さんも笑いを堪えきれてなかった。
「ククク...鶴さん、最高...!」
「貴方...椿殿に殴られますぞ?」
「何!?それは嫌だ...」
「きゃああああ!!?」
遠くの方で、女性の甲高い悲鳴が聞こえてきた。
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ファーストMe - めちゃくちゃ面白いです(о´∀`о)更新頑張ってください! (2017年2月25日 15時) (レス) id: 4d48430878 (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» うぁぁ(自慢)だなんて!嬉しい限りです!もちろん、乗せて頂くのはOKです☆ありがとうございます(o^^o) (2016年12月30日 23時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» いえいえ!描いて頂き、本当にありがとうございました!確認次第、小説の方に載せさせて(自慢)頂きたいのですが...よろしいでしょうか? (2016年12月30日 20時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» あ、はい!そうです。杏仁豆腐さんのボードにURL貼らせて頂きました。説明不十分ですみません汗 (2016年12月30日 20時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» ありがとうございます!えーっと...ボードの方でよろしいのでしょうか? (2016年12月30日 19時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
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