6話 月夜に笑う ページ8
夜の冷えた風が、広間の中央で寝転がっている男の髪を揺らした。
庭から聞こえる鈴虫の鳴き声と共に、彼の腹の虫が響き渡る。
因みに、彼は夕飯を食べていない...いや、食べさせて貰えていないのであった。
『あ〜！！もう、お腹空いたんスけど！！』
「あんたの自業自得だろ」
ごろごろと転がりながら喚くAに、縁側で本を読んでいた薬研が呆れたような声を掛けた。
あの後、結局彼は夕飯にありつくことが出来ず、何ともひもじい思いをしているのである。
ごろんと仰向けに寝転びながら、Aはそうッスけど...と頬を膨らませた。
「...ったく、しょうがねぇなぁ！
何か作ってやるから、駄々を捏ねるの止めろ！」
『さっすが、薬研様！大好きッスよ！！』
遂には泣き真似を始めるA。
これには、流石の薬研も折れるしかなかった。
広間の長机に本を置き、抱き着いてくるAに腹パンを決めてから厨房へと足を向けた。
腹パンを決められ地に伏したAは、その小さな背中に手を合わせて感謝の意を示す。
『...うぐたんは自室、まんばたんは風呂。
薬研たんは厨房...これで、此処にいるのは俺だけッスよ＿＿＿
＿＿＿つるたん？』
「...気付いてたのか」
ふ、と合わせていた手を下ろし、自身の背後を振り返ったA。
そこには、月明かりに照された一振りの鶴が抜き身の獲物片手に突っ立っていた。
妖しい笑みを浮かべ、金色の双眼で自身の目の前にいる男のことを見やっている。
「君は言ったよな...？
“俺の人間に対する怨みは、全部この俺が一身に受け止める”...と」
『言ったスね』
「男に二言は？」
『ないッス！』
己へと真っ直ぐに向けられる“鶴丸国永”に対し、Aは清々しいほどの笑顔で頷いた。
死を恐れない...そんなAの態度に鶴丸は眉を潜めるも、すぐに迷いを払う。
片手で持っていた獲物を両手で持ち直し、受け身すら取っていないAに向かって斬り掛かる。
残り数センチの所まで刃が迫っても、Aは笑顔を向けていた。
「...なん、で」
『...何がッスか？』
広間に、血の臭いが充満することはなかった。
鶴丸の薙いだ獲物は、ターゲットのすぐ側の空を切っただけだったのだ。
「どうして、君は...笑っていられるんだ。
死を、恐れないんだ...！」
畳にめり込む鋒を瞳に写しながら、鶴丸は震える指先を握り込んだ。
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あ - 更新待ってます (2017年11月29日 1時) (
レス) id: e1ae95dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
柚希 - 面白いです！続きが気になります。更新楽しみに待ってます(゜∇^d)!!(゜∇^d)!! (2017年4月30日 10時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこりアロエ - 1でｯ!!!!! (2017年3月21日 20時) (レス) id: 0d3966aac5 (このIDを非表示/違反報告)
トゥクルカ(プロフ) - 1でお願いします！続き楽しみにしてます！ (2017年3月20日 11時) (レス) id: 77391b8609 (このIDを非表示/違反報告)
ヴェルさん(プロフ) - 2が良いです。鶴丸にはホワイト本丸の味を知ってほしいです…ブラックな家族が顕現したら耐えられないとも思いますし... (2017年3月20日 11時) (レス) id: 8a36f75a5a (このIDを非表示/違反報告)
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